【ダイヤのＡ】甘くて苦い恋の味【短編集】

成宮鳴 × 特別な日 ページ42

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私の幼馴染みの成宮鳴はモテる。


可愛らしい顔で、稲実野球部のエースで、周りからは都のプリンスだなんて呼ばれて。


本人も満更でも無い様子でチヤホヤされてるし、姉が居る影響なのか女の子の扱い方もうまい。


そんな彼に「好きな人が居るらしい」と噂が立ったのは冬休みに入るちょっと前だった。


彼の誕生日は1月5日。誕生日をお祝いしたいと伝えた女の子に彼が「誕生日は特別な日だから、好きな子と過ごしたい」そう断ったのが事の発端だったらしい。


私もそう噂に聞いていたのに、何故か彼は今私の部屋で念のために用意していたアイスケーキを幸せそうに頬張っているから不思議で仕方がない。


「あー美味い！やっぱ誕生日はアイスケーキに限るね」


「ねぇ、鳴。なんでここにいるの？」


「なんでって…毎年のことじゃん。俺の誕生日はAがこうやってケーキ用意してくれて祝ってくれんの。そんで、Aの誕生日は俺が祝う」


「そう、だけど…」


鳴の言うとおり、私たちは小さい頃から毎年欠かさずお互いの誕生日を祝ってきた。


1月5日には今こうしている様に鳴の好きなアイスケーキを用意して二人で仲良く食べる。これが当たり前だった。


「今年は違う人と過ごすのかなって思ってたから」


「違う人？」


「うん、その…好きな子、とか。実は噂で聞いちゃってさ、鳴が『誕生日は好きな子と過ごしたい』って言ってたの」


ここまで言うと鳴は手を止めてスプーンを置くと「確かにそう言ったよ」と言葉を零す。


その言葉を聞いて「こうして鳴と居れるのも最後なんだ」と思うと今にも泣きそうな気持ちになったけれど、ぐっと拳を握って笑顔を作った。


「それじゃあダメじゃない、こんなところに居たら。好きな子のところ、行かないと。あ、なんならケーキは持って帰る？その子と一緒に食べれば……」


「A」


ベラベラと無理矢理明るく振る舞って紡いだ言葉をたった一言、名前を呼ばれただけで遮られる。


「俺さ、昔からずっと誕生日は好きな子と過ごすって決めてんの。今日も、好きな子と特別な日を過ごしたいからここに来たんだけど…この意味分かる？」


「嘘…」


「俺の好きな子ってAだから。気付くの遅せーよ、ほんと」


みるみる内に上昇する体温。それは見た目からも分かる様で「顔真っ赤」と鳴に笑われたけど、鳴の顔も赤くなっていた。


「私も、鳴のこと好き。誕生日、おめでとう」


「有難う。これからもずっと、祝ってよね」

小湊春市 × 名前→←Christmas story.Part3

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