小湊春市 × 前髪 ページ38
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新学期早々、事件が起きた。
甲子園出場を果たした野球部が始業式で壇上に上がった時、私の周りの数人の女子から聞こえた言葉。
「小湊くん、かっこよくなったね」
目の下まで伸びていた前髪をばっさりと切って、ぱっちりとした目が見えたことで、今まで春市のことを「女の子みたいで可愛い」と言っていた女子達が「格好いい」と見る目を変えたのだ。
2年になってクラスが離れてしまった為に、春市のクラスを覗きに行けば、男女問わずクラスメイトに囲まれて楽しそうに話す春市の姿があって。
私に気付いて教室を出て来てくれたけれど、廊下で話をしてる間にも通りすぎる人達に「前髪切ったんだ?いいね」と声を掛けられている。
「ねぇ、どうして前髪切ったの?」
「変かな?」
「ううん、変じゃないよ、でも…」
春市が短くなった前髪を親指と人差し指で挟むようにして触る。元々目線が近い私たちは真っ直ぐ視線が絡まる。
今までは春市の目を真っ直ぐ見れるのは、彼女である私だけの特権だとそう思ってた。でも今は違う。それが少し寂しいのと、周りに格好いいと言われているのが少し不安だ。
「A、そんな風に思ってくれたんだ」
「何、笑ってんの」
はっきりと、自分の気持ちを伝えるとくすくすと楽しそうに笑う春市。
やっぱり言わなければ良かったと後悔しはじめた時、すっと腕を引かれて抱き寄せられた。
「ちょ、春市!?皆見てるよ」
「Aが可愛いのが悪いんでしょ」
「恥ずかしいよ…春市も顔真っ赤なくせに」
「見えないでしょ」
春市の言うとおり、彼の肩に顎を置いてる私には春市の表情は見えなくて。代わりに周りを歩く同級生の好奇な視線が突き刺さる。
「不安になら無くても大丈夫だから。僕の目にはAしか映ってない」
「……ずるいよ春市。益々好きになっちゃう」
「それは願ったり叶ったり」
漸く離れた春市の顔を見ると案の定顔を真っ赤に染めていて。でも多分、私も春市と同じように真っ赤になってる。
「Aにしか見せないとこまだ沢山あるから。彼女の特権」
春市は笑ってそれだけ言うと、授業が始まるからとまた教室に戻っていった。その背中を見て、本当に更に格好良くなったと実感した。
Christmas story.Part1→←伊佐敷純 × 帰省
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美憂春(プロフ) - いえ!これからも楽しみにしてますね!ヽ(*´∀`)ノ (2017年1月22日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» コメントありがとうございます!最後まで読んでいただき、更には全部好きとまで言っていただき本当に嬉しいです。美憂春さんのコメントにいつも支えられてました。本当にありがとうございました!また別の作品も宜しくお願いします。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 御幸、狙い打ちだー!!ヽ(*´∀`)ノ 私、全部好きです!!(o´艸`) (2017年1月22日 21時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» またまたコメントありがとうございます!亮さんはどんな話にも対応できるのでいつも助かってます(笑)私も自分で書きながらニヤニヤしちゃいました (2017年1月17日 9時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 亮さん、おっとなー!!キャ───(*ノдノ)───ァ笑 にやにやしちゃいました!笑 (2017年1月16日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:げび | 作成日時:2016年10月4日 0時