轟雷市 × 目線 ページ33
-
最近雷市の様子が変だ。
一概に変と言っても別に調子が悪いと言うわけでも無く、端から見ればいつも通りなのだが、何故か私と話す時だけ変なのだ。
元々人と話すどころか目を合わせるのも苦手とする彼とは、同じ野球部。彼は選手で、私はマネージャーという立場というのもあって距離を詰めるまで時間は掛かったが漸く、私に対しても普通に接してくれるようになってきていた。
それなのに最近はまた距離を開けられている気がする。話し掛けても短い返事が返ってくるだけで、目どころか顔も合わせてくれなくなった。
「おーい、雷市ー!今日は素振りだけじゃなくて球打っとけよー?」
「あ、それなら私トスバッティング付き合おうか?」
練習後、監督に声を掛けられている雷市を見て尋ねるとすっと顔を反らされる。
「えっと…、み、ミッシーマにお願いする…」
段々と声を細くしながらそう答える雷市。
「ミッシーマも自主練あるし、私付き合うよ?」
「そ、それじゃあ、アッキーに……」
未だに此方を見ること無くそう言う雷市にいい加減カチンときた私はそのまま練習に向かおうとする雷市の腕を掴む。
「なっ、何だよ」
「何じゃない!ねぇ雷市、最近私のこと避けてるよね?」
漸く向かい合うことが出来たのに、それでも目を見てくれない雷市に段々と悲しくなってくる。
「えっと、その、」と目を泳がせたり、キョロキョロとする雷市の頬を両手で挟み込んで、ぐいっと顔を近付けた。
「そりゃ人間だからね、合う合わないはあると思うよ。私のこと嫌いかもしれない、でも…」
「違う!!」
自分の気持ちを鎮めながら言葉を繋いでいると、私の話の途中で不意に雷市が声をあげる。
「俺は、Aのこと、嫌いなんかじゃ、ない」
「…え?」
「でも、Aと居ると、なんか、こう…ぐあーってなって、ばーってなって…練習に集中できなくて…」
「ちょっと待って、よく分からないけどそれって…」
「好きってことだよな?雷市」
「監督」「親父!!」
ニヤニヤと笑みを浮かべた監督は「どうでもいいけどよ、早く練習行け」とだけ言い残して去って行った。
「…雷市、監督が言ってたことって本当?私は雷市の言葉が聞きたい」
コクンと一度頷いた雷市はゆっくりと自分の言葉を紡いでいった。
「お、俺は、Aのことが…好き、だ」
やっと私の目を見てそう言ってくれた雷市に「私も」と笑って抱き付いた。
211人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美憂春(プロフ) - いえ!これからも楽しみにしてますね!ヽ(*´∀`)ノ (2017年1月22日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» コメントありがとうございます!最後まで読んでいただき、更には全部好きとまで言っていただき本当に嬉しいです。美憂春さんのコメントにいつも支えられてました。本当にありがとうございました!また別の作品も宜しくお願いします。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 御幸、狙い打ちだー!!ヽ(*´∀`)ノ 私、全部好きです!!(o´艸`) (2017年1月22日 21時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» またまたコメントありがとうございます!亮さんはどんな話にも対応できるのでいつも助かってます(笑)私も自分で書きながらニヤニヤしちゃいました (2017年1月17日 9時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 亮さん、おっとなー!!キャ───(*ノдノ)───ァ笑 にやにやしちゃいました!笑 (2017年1月16日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:げび | 作成日時:2016年10月4日 0時