滝川・クリス・優 × 月 ページ31
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「……熱心なのは良いけれど、こんな時間までやってるのは感心しないな」
「クリス先輩!!」
練習が終わってスコアブックの整理やら何やら後片付けをせっせとしていると、トレーニングを終えたクリス先輩が覗きに来た。
クリス先輩にそう声を掛けられて時計を見ると21時を回っていて。
「わ!もうこんな時間!?」と焦っていると小さく笑って「手伝おう」と片付けを手伝ってくれた挙げ句、駅まで送ってくれることになった。
「すみません、送って貰っちゃって…」
「こんな時間に一人で帰らせるわけにもいかないだろう」
クリス先輩は部活を引退したにも関わらず、会えば調子はどうだと優しく声を掛けてくれるし、いつでも紳士的だ。
「A、寒くないか?」
「はい、クリス先輩も寒くないですか?」
「あぁ」
今だって隣を歩く私のペースに合わせてゆっくり歩いてくれて、気遣ってくれる。
そんなクリス先輩にいつからか恋心を抱いている、けれど未だにその気持ちは伝えられていない。
それでも今はこうして隣を歩けるだけで幸せだと思う。
「A、見えるか?月が綺麗だぞ」
「え?あ、満月!凄い!綺麗ですね、クリス先輩!!」
歩いている途中ですっとクリス先輩が腕を上げて空を指差す。差された先に顔を向けると大きな満月が目に入る。
「知っているか?かつて夏目漱石が英語教師をしていた時、『I love you』を『月が綺麗ですね』って訳したという話があるんだ」
「あ、その話知ってます!素敵な話ですよね」
「……俺が今、そういう意味で、月が綺麗だと言っていたとしたらどうする?」
「……へ?」
突然のことで、今、口から発せられた声のように、間抜けな顔をしてるんだと思う。
それなのにクリス先輩は優しく微笑んでそっと私の頬に手を添えた。
真っ直ぐ見つめてくる視線に、ゴクリ、と唾を飲んでから言葉を返す。
「…月は、ずっと綺麗でしたよ。
クリス先輩と見る月は、いつだって輝いて見えました。ううん、月だけじゃなくて、景色全てが。私、クリス先輩のことが…」
「その先は俺から言ってもいいか?」
すっとクリス先輩の人差し指が私の唇に触れる。コクンと一度頷くとクリス先輩が「有難う」と呟いてから話を続ける。
「A、俺はずっと前からお前のことが好きだ。もし良ければ付き合ってくれないか?」
「私も…好きです。宜しくお願いします」
綺麗な満月に照らされた2つの影がゆっくりと重なった。
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美憂春(プロフ) - いえ!これからも楽しみにしてますね!ヽ(*´∀`)ノ (2017年1月22日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» コメントありがとうございます!最後まで読んでいただき、更には全部好きとまで言っていただき本当に嬉しいです。美憂春さんのコメントにいつも支えられてました。本当にありがとうございました!また別の作品も宜しくお願いします。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 御幸、狙い打ちだー!!ヽ(*´∀`)ノ 私、全部好きです!!(o´艸`) (2017年1月22日 21時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» またまたコメントありがとうございます!亮さんはどんな話にも対応できるのでいつも助かってます(笑)私も自分で書きながらニヤニヤしちゃいました (2017年1月17日 9時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 亮さん、おっとなー!!キャ───(*ノдノ)───ァ笑 にやにやしちゃいました!笑 (2017年1月16日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:げび | 作成日時:2016年10月4日 0時