轟雷市 × 相合い傘 ページ19
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「あちゃー、降ってきちゃった」
今日は必要な用品の買い出しにやってきたのだが、いざ買い物を終えて店を出ると雨が降りだしていた。
学校を出るときから曇天で、真田先輩達にも傘を持ってくように言われてたのに、「ちょっとの間だけだから」と傘を持たずに出てきたら案の定。
「これくらいなら大丈夫かな」
土砂降りという訳でも無いので傘が無くとも多少濡れるくらいで済むだろう。そう考えた私が足を踏み出した時、名前を呼ばれて顔を上げると傘を差した雷市が居た。
「えっ、雷市!?練習は…?」
「Aが、か…傘持たずに行ったって聞いたから…その…」
「迎えに来てくれたの!?」
雷市はコクンと頷く。「有難う!助かる!」と駆け寄ると「カハ…カハハ」と頬を赤く染めて笑った。
「それじゃ、これ…」
「ちょちょちょ、ちょっと待って!!」
ずいっと傘を差し出して私に無理矢理握らせると、自分はパーカーのフードを被って走りだそうとする雷市を必死に引き留める。
「なっ、何だよ」
「いや、こっちの台詞!一緒に帰ろーよ!!」
「ね?」と傘を雷市のほうに傾けると渋々傘に入ってくれる。
「あ、俺持つ」
すっと差し出された両手。片方は傘を、もう片方は荷物を持ってくれる雷市。然り気無い優しさに喜びを感じつつ「ありがとう」と言うと「当たり前だ」と笑ってくれた。
暫く歩いているとふと雷市の肩が濡れていて、傘が私の方に傾いていることに気付きそっと傘の柄を雷市のほうに押し返す。
するとまた雷市が私の方に傘を傾け、またそれを押し返す……というのを数度繰り返す。
「雷市、真っ直ぐ差して」
「A、濡れない?」
そう心配そうに覗き込んで来るので傘を持つ方の腕に自分の腕を絡ませてぎゅっとしがみついてやる。
「これで大丈夫でしょ?」
「カハハ…傘、2つ持ってこれば良かった」
「なんで?くっつくの嫌だ?」
顔を覗き込むようにしてそう問い掛けると雷市は目を反らして「嫌じゃない。でも…」と呟く。
「心臓が…ドキドキ言って苦しい」
「雷市……もっとドキドキさせてあげようか?」
立ち止まって彼の前に回り込む。傘を握る雷市の手にそっと自分の手を重ねて踵を上げる。
ちゅ、と小さく鳴ったリップ音は雨の音よりも鮮明に耳に残った。
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美憂春(プロフ) - いえ!これからも楽しみにしてますね!ヽ(*´∀`)ノ (2017年1月22日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» コメントありがとうございます!最後まで読んでいただき、更には全部好きとまで言っていただき本当に嬉しいです。美憂春さんのコメントにいつも支えられてました。本当にありがとうございました!また別の作品も宜しくお願いします。 (2017年1月22日 23時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 御幸、狙い打ちだー!!ヽ(*´∀`)ノ 私、全部好きです!!(o´艸`) (2017年1月22日 21時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
げび(プロフ) - 美憂春さん» またまたコメントありがとうございます!亮さんはどんな話にも対応できるのでいつも助かってます(笑)私も自分で書きながらニヤニヤしちゃいました (2017年1月17日 9時) (レス) id: f7438c8014 (このIDを非表示/違反報告)
美憂春(プロフ) - 亮さん、おっとなー!!キャ───(*ノдノ)───ァ笑 にやにやしちゃいました!笑 (2017年1月16日 23時) (レス) id: 03ce076a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:げび | 作成日時:2016年10月4日 0時