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二百一話 消えた我が家の嫁 ページ7

【目線なし】


「ぐっ……よもやよもやだ」


Aの姿が完全に見えなくなると
杏寿郎は息苦しい胸を押さえ真横に倒れた。

いつも逃げられてばかりいる彼女から
溢れる好意をぶつけられて思考が停止し
かつてなく困惑している。


“せっかくなので用事ついでに
 貴方を虜にする技も学んできます”


(……今以上骨抜きにされては困るな)


Aが咳払いした時点で目は覚めていた。

しかし、杏寿郎が起きたと知れば
逃げるとわかっていたので
心苦しいが彼は寝たふりを続けたのだ。

隠しようのない激しく脈打つ心音に
疑問を持たれなかったのは幸いである。


「兄上お帰りでし…って、どうしましたか!?」


そこへ通りかかった千寿郎が
縁側でうずくまる兄を見て目を見開いて驚く。

未だ起き上がることもままならず
心配そうに駆け寄る弟にゆっくりと目を向け
彼はなんとか口を開いた。


「凄まじい奇襲であった…っ」


「えっ?お、鬼ですか!?」


共喰い鬼たる者から受けた奇襲ゆえ
確かに鬼の仕業には違いない。


“お日さまの匂いも逞しい広背筋も
 優しい眼差しも温かい体温も……全部すきぃ”

“ずっと……ずっと…好きでした。
 今はもっと好きです。
 明日はさらに好きになってます”


背中に触れた柔らかな感触と
独り言だからこそ取り繕わない本音が
鈴の音のように耳に何度も反響する。

連日の隊務からくる疲労と
心地よい日射しも相まって意識が遠のいた。


「め…とる……必ず娶る…っ」


「あ、兄上ーっ!!」


まるで遺言のようにそう言い残して
杏寿郎は安らかな表情で眠りに堕ちる。

しばし煉獄家には動揺が走るが
後に真相を聞いて人騒がせと呆れながらも
大事ないことに皆は安堵した。



* * *



そして、Aが煉獄家をあとにして
あっという間に半月ほど経過した。

目的地も伝えなかったために
行方を探す手立てもなく
ただ不安を募らせて日々を過ごしている。


「義姉上……戻られませんね」


隊務のため家を出る直前の
杏寿郎を見送る千寿郎が表情が曇らせて呟く。

彼だけにとどまらず
念願の義娘の健在の報せもない長期不在に
瑠火も槇寿郎もひどく落ち込んだ。


「Aには成し遂げたいことがある。
 それを阻むことはしないと最初に約束した」


弟の手前、気丈に振る舞う杏寿郎も
せめて行き先を聞くべきだったと悔いている。

妙な胸騒ぎがして
今朝もどんぶり飯三杯しか喉を通らなかった。



**********


続く

二百二話 今度は嫁とともに→←二百話 寝込みに奇襲


煉獄さんコレクション

煉獄先生 歴史と教育への熱心な姿勢にうっとり!黒板じゃなくて先生だけを見つめちゃうと怒られるよ


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亜紀野ユキ(プロフ) - ゆゆさん» ありがとうございます!続編もどうぞよろしく(^-^)/ (6月2日 0時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 久しぶりに作品見に来たらたくさん更新されててめっちゃ嬉しかったです!堕姫ちゃんとの関係のところで涙出ました...知らぬ知らぬうちに関係が深まっていって...(泣)来世のお話もすっごく良かったです。みんな幸せになって欲しいな...この作品をずっと応援してます! (6月1日 19時) (レス) @page40 id: 2307c0fefd (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - みっささん» 嬉しいです!近日中にまた更新します_〆(゚▽゚*) (5月8日 18時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
みっさ - 初コメ失礼します!面白くて優しくて可愛いヒロインちゃんって神では!???何時も楽しく見させていただいてます!ゆっくりでいいので更新がんばってください! (5月8日 16時) (レス) @page47 id: 0ca1847e23 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - あさん» 頑張ります(〃ω〃)ポッ (5月8日 1時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2023年2月1日 16時

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