百五十四話 温かく見守られ ページ9
【目線なし】
柱との会話で現状把握に満足し
Aは鬼殺隊本部をあとにした。
彼女の去ったあとは
まるで嵐が過ぎ去ったように静まり返る。
「……ああいう子だから心配なんだ」
ふっ…と、笑みをこぼして
輝哉が穏やかに目を細めた。
それは、Aの言動が幼いため
何をしでかすか不安…という意味ではない。
周りの者の幸福ばかりを願って奔走し
人智を越える力を惜しみなく使い
自己犠牲も厭わぬ姿勢が危ういのだ。
「あの子は未だに己を過小評価している。
そして、自分のことは二の次なんだ」
成し遂げたことは数知れないけれども
彼女自身は幼さ残る平凡な少女。
愛嬌があり、喜怒哀楽がはっきりして
気遣い屋だが悪戯心も持ち合わせている。
手にした力と心が不釣り合いなのだ。
「皆もあの子を気にかけてあげてくれ」
つまずいたときに手を差し伸べ
危ない道へ行こうとしたら止めて
間違えたら諭せるように…と。
────御意。
柱の面々も、その意を酌んで深く頷き
皆の声がぴたりと揃った。
その後───…
鬼舞辻や上弦との戦いを想定して
それぞれ意見を出し合った。
話の流れでついうっかり
天元がAの杏寿郎への恋心を暴露して
周知されてしまったが。
今後、恋愛音痴が多い柱によって
その進展が生温かく見守られることとなる。
* * *
少しして、
珠世と愈史郎の元へ手紙が届く。
「これは……どういう意味なのかしら…」
「どうしましたか、珠世様」
悩ましげに首を傾げる姿を見て
今日も美しい…と幸せを噛みしめながら
愈史郎が問いかける。
「Aさんから手紙が届いたけれど
要領を得ないというか…」
困惑する彼女から受け取って目を通すと、
“愛しき人に誤解与え困らせて悲しませて
斬首刑が相当でおまわりさん私です
けしからん胸筋が控えめに言って最高でした”
感情のまま筆を走らせたらしく
そう書き殴られていた。
常人には理解出来ない文だろう。
しかし、
「緊張のあまり好いた者と上手く話せず
誤解を生じ死ぬほど申し訳ないが
やっと会えてこの上なく幸せだった…と」
荒ぶるAと何度もやりとりした
愈史郎は過不足なく解読する。
それに珠世は目を瞬かせて驚くも
彼にもようやく心を許せる友が出来たと
口元を緩めて微笑む。
(……よかったな同志。
そして、今日も今日とて珠世様は美しい!)
遠い地の戦友の吉報を密かに喜んだ。
**********
続く
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亜紀野ユキ(プロフ) - 桜井直(なお)さん» ありがとうございます(´ω`*)コツコツ頑張ります (2023年1月29日 12時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
桜井直(なお)(プロフ) - 亜紀野ユキさん» ヒロイン、可愛い。。作者さんは天才!こんないいお話を!続編待ってます! (2023年1月29日 10時) (レス) @page50 id: f84b7d123d (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 綺羅さん» わっしょいなご祝儀ですね(*´∀`)占いコーナーまでご閲覧嬉しいです (2023年1月18日 21時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - kanayamamoto112さん» こんな子ならストーカー気質でも推せますね(*´ω`*)ほっこり (2023年1月18日 21時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
綺羅(プロフ) - 尊いッ!!見ていて癒やされます、御馳走様です(笑)ご祝儀はサツマイモでも…(笑)そして占いのおはぎに笑いました(笑)一か八かでずんだにして持って行ってみます!← (2023年1月18日 21時) (レス) id: fcc9d08bef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2022年9月7日 17時