百六十一話 託された贈り物 ページ16
しかし、当然ながら…
───ぷしゅう…ぴゅうぅ…
私が瓢箪を吹いても
どこからか空気が抜ける音がするだけだ。
わかってたけれどもー!
「Aさん元気出してください」
「私たちもできないから大丈夫ですよ」
「よしよし…」
しょぼくれて部屋のすみで丸まってると
三人が励ましてくれた。
幼女にあやされるとは恥を知れ…とは思うが
想像以上の弱味噌っぷりに
今はちょっと元気出ないです。
「Aお姉ちゃん…!」
「お姉ちゃん頑張れー」
「優しいAお姉ちゃーん」
白衣の天使たちの口から紡がれる
甘い響きにぴくっと体が反応する。
「よし…!誰にでも向き不向きがある。
治療のお手伝いしよ」
「「「おーっ!」」」
こうして、愛らしい幼女に諭されて
私は本来の役目を思い出した。
チョロいと言われようとも構わぬ!
* * *
【目線なし】
時間は少し遡り───…
Aが出来心で瓢箪を吹くのを
蝶屋敷の外から見守る人影があった。
「よもや……あれが父上や母上の言う
小動物のような愛らしさ…!」
口元を手で覆って呟くのは杏寿郎だ。
リスのように頬を膨らませる姿に
自然と和らげな笑みが浮かぶ。
(懇意にしてる胡蝶姉妹の元で
心穏やかに過ごしてるようだな)
このまま自分が訪ねては
あの無邪気な笑顔を陰らせてしまうだろう。
思えば、杏寿郎がこれまで見てきたのは
Aの泣き顔ばかりである。
正面からではないにしても
純粋な笑顔を見たのはこれが初めてとなる。
(直接は叶わずとも誰かに託したいが……)
直感的にこれだと思って購入した
手中の物をきゅ…と握りしめる。
すると、そこへ───…
「わんっ」
声を受けて足元に目を向けると
そこには茶色い柴犬が行儀よく座っていた。
「もしや……貴殿がきなこか?」
「わうっ」
柱合会議の一幕を思い出して問うと
それに応えるように犬が吠える。
この出会いを杏寿郎は渡りに船と感じた。
「……よければ、これを
主人に渡してはくれないだろうか」
手紙と“それ”を持って言うと
ここにくくりつけろと言わんばかりに
きなこは紐の結われた首を差し出す。
「賢い子だな。あとは頼んだ」
最後にその頭をひと撫ですると
杏寿郎は踵を返して蝶屋敷をあとにした。
(願わくば……次に会うときは
正面から君の笑顔が見たい)
待ち遠しい再会も願望が叶うのも
思ったよりもすぐである。
**********
続く
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亜紀野ユキ(プロフ) - 桜井直(なお)さん» ありがとうございます(´ω`*)コツコツ頑張ります (2023年1月29日 12時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
桜井直(なお)(プロフ) - 亜紀野ユキさん» ヒロイン、可愛い。。作者さんは天才!こんないいお話を!続編待ってます! (2023年1月29日 10時) (レス) @page50 id: f84b7d123d (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 綺羅さん» わっしょいなご祝儀ですね(*´∀`)占いコーナーまでご閲覧嬉しいです (2023年1月18日 21時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - kanayamamoto112さん» こんな子ならストーカー気質でも推せますね(*´ω`*)ほっこり (2023年1月18日 21時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
綺羅(プロフ) - 尊いッ!!見ていて癒やされます、御馳走様です(笑)ご祝儀はサツマイモでも…(笑)そして占いのおはぎに笑いました(笑)一か八かでずんだにして持って行ってみます!← (2023年1月18日 21時) (レス) id: fcc9d08bef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2022年9月7日 17時