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夏祭り当日。
楽しみで待ち合わせ時間より早く来てしまったため、柱に寄り掛かって二人の到着を待っていた。
待ち合わせ五分前の時間になると幸郎が来た。
日比谷はまだ来ていない。
いつもなら、五分前には到着している日比谷が、待ち合わせ時間に遅れている。
怒っているとかではない。むしろ、心配を意味している。
「 ‥‥‥日比谷さん、遅いね 」
幸郎も同じことを考えていたらしく、若干表情を曇らせていた。
十分経っても来なかったら探してみるか、と提案をしようと隣にいる幸郎の方を見ると、
「 わ、二人ともごめん 」
俺の背中の方から、よく聞き慣れた声が聞こえた。
きっと、急いで来たのだろう。少し息が荒い。
大丈夫だということを伝えよう振り返ると、───息を呑んだ。
───『綺麗』。無駄に飾った言葉ではなく、たった一言。けれど、彼女にはぴったりの言葉。
青をベースにした朝顔柄の浴衣に、いつもはストレートの髪を軽く巻き、結っている。
いつもは、あまり人を好まない性格上、人を寄せ付けない無愛想さを演出していたが、元は凄く美人なのだ。そこに柔らかい印象をプラスしてしまうと、本当に、美人。
わかってはいたけど、日比谷が女子だと再確認させられた気がして、ぼうっと見つめてしまう。
「 ‥‥‥やっぱり、変だった?」
日比谷は、明らかにシュンとしながら耳元の髪をいじる。
「 ‥‥‥似合ってる、と思うよ 」
返信に困っている俺に対し、幸郎はそう答える。
限りなく、いつもの様子。でも、どこか違和感を含む表情だった。
日比谷は見つかったのだから、悲しい表情なんて、しなくて良いはずなのに。
「 ね、光来くん」
些細な気遣いだけど、その言葉は、俺が発言しやすいように誘導してくれる。
先程の違和感はとりあえず保留にし、内心幸郎に感謝しつつ、心臓のバクバクという音を抑えながら首元に手を置き、
「 ‥‥‥綺麗、だと思う 」
平常心を装っているが、今の俺の顔は真っ赤だろう。
これで揶揄られたりしたら、恥ずかしくて穴に埋まりたい気分だ。
「 ‥‥‥ありがと 」
照れるように笑う目の前の少女。
「 それじゃ、行こ! 」
いつになくはしゃぐ日比谷を見て、俺も笑ってみせた。
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「 星海金魚すくいへったーw」
「 うるせぇ 」
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「 りんご飴って何気初めてかも 」
「 美味しいよね〜 」
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こんな時間が続けばいいのに、なんて。
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恋う。(プロフ) - Renrenさん» 誰かの生きる理由になれるような偉大な作品を書けたとは全くもって思っていませんが、少しでもあなたのためになれたなら心から嬉しいです。こちらこそコメントありがとうございます!! (2020年12月26日 10時) (レス) id: b0168ce166 (このIDを非表示/違反報告)
Renren(プロフ) - 私も、生きる意味が分からなかったけど、この小説読んで今生きる理由を見つけました。ありがとうございます (2020年12月25日 20時) (レス) id: c1d45c9094 (このIDを非表示/違反報告)
恋う。(プロフ) - まみさん» あ"り"が"と"う"ごさ"い"ま"す"!!!!!!私自身も夢主ちゃん一途すぎね?と思いながらかいてます笑笑 昼神くん救われねぇなあ‥‥(遠い目)って感じです。コメントありがとうございました!!! (2020年12月7日 6時) (レス) id: b0168ce166 (このIDを非表示/違反報告)
まみ(プロフ) - もう本当に好きです、、、星海くんと夢主のすれ違いがなんとも悲しいし、夢主は他の夢小説と違ってほんとに一途でとても素敵だと思います。でも自分はどうしても幸郎に感情移入してしまってなんとも辛いです、、、 これからも応援させていただいています! (2020年12月7日 0時) (レス) id: 78a66a55d1 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - うわぁーーーーーー……。星海くん、イケメンやわぁ。夢主ちゃん最終的に選んで欲しいけんなぁ。。 (2020年10月11日 15時) (レス) id: 4da161d36b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:恋う。 | 作成日時:2020年7月12日 18時