31話 破壊 ページ33
「はは、運命の番だったら、絶対に好きになるわけ？」
L「そうですけど」
「馬鹿馬鹿しいね、本当に」
AはLの胸ぐらを掴む。
そんなに運命の番を信じているのなら、たった今、壊してやろうと思ったのだ。
「刺激が足りないのかもね？キスしたら、好きになってるかも」
そう言って、AはLにキスをした。
ただのキスではない。相手に配慮すらもしない、乱暴なキスである。
L「ッ、う…」
(…。うん、やっぱなんにも感じないや)
Aの胸が高鳴ることはない。ほら、運命の番など、あるわけがなかった。
心の底から安心したAは、胸ぐらを雑に離すと、LはAから距離を取り、口を拭った。
L「…酷いですね」
「あれ？私にキスされて嬉しくないの？」
L「こんな形は望んでいませんよ」
Lは、弄ばれた気持ちになったのだろう。
刺すような目つきで、Aを見ている。
L「…本当に何も感じないんですか？」
「だから何回も言ってんじゃん。なんにも感じないよ」
やっぱり可笑しい、とLは眉をしかめる。
運命の番に会えば、お互いが惹かれ合い、一瞬で恋に落ちるというのは、本当の話である。
実際Lは、Aと初めて会ったあの瞬間から、恋に落ちたのだから。
…しかし、相手のAは自分に対し、その感情は持ち合わせていないと本気で言っている。
じゃあ自分のこの感情は、どこにぶつけたら良いのだろうか。
L「Aさん」
「なに」
振り返るAに、今度はLからキスをする。
それは唇が触れる程度の軽いキスであったが、乱暴なAとは違い、Lのキスはあまく優しいものであった。
L「それでも、私は貴方が好きです」
「きもッ！」
AがLにビンタしても、Lは動揺もせずにコチラを見続ける。
Aは、Lの瞳が嫌いだ。全てを見透かされそうで、心が落ち着かない。
「何を言おうが、アンタを好きになることはないわ！私は…ッ」
月「…A、流河？」
突然聞こえた兄の声に、Aは驚いて振り返る。
そこには、図書館のドアの隙間から、月が顔を覗かせていた。
月「…遅いから様子を見に来たんだけど、何か邪魔しちゃったかな？」
L「あぁ、夜神くん。Aさんの説得に、時間がかかってしまいまして」
月「あ、そうなんだ。てっきり、お茶のことを忘れているのかと…」
月は静かに図書館に入ると、Aに近付き"一緒にお茶を飲みに行こうよ"と笑顔を向けてくる。
Aは隣のLを見て、嫌だと首を横に振った。
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作者名：あっきー | 作成日時：2019年5月1日 12時
