19話 運命の番 ページ21
試験監督「君!きみだよ!なんですかその座り方は!」
?「えぇ?あ、はい」
試験監督「ちゃんと座って、ほら!」
試験監督と、抑制のない男の声が聞こえてくる。
…一体どんな座り方をしたら、注意されるのだろうか。そんなどうでもいい事がAは気になった。
それは、テストがAにとって、あまりにも簡単なものだったからだろう。
Aは平然を装い、ゆっくりと後ろを見た。
自分の後ろ席2つ分。
今も、試験監督に注意を受ける男がいる。その男は異様な雰囲気を放っていた。
相当な変わり者なのだろう。実際、ふざけた体育座りをしているし、そりゃあ試験監督に目を付けられるワケだ。
フッと笑ったところで、男が試験監督から、Aに目線をうつした。パチっと目があった。
黒い瞳と目があった。
?「あ」
「ッ!?」
その瞬間、Aの体に、ビビビビッ!!と強い電撃が走る。いきなりの衝動にAは訳も分からず、その男を凝視した。
男も、同じようにAを見つめている。
(な、ななな、なに今のッ…)
混乱と共に、体温が上昇していく。
胸が高鳴り、視界がボヤケていく。
Aは、薄々気付き始めていた。
経験した事もない初めての感覚であったが、本能で理解する。
間違いない、
…いや、でも、まさか
(私の、運命の、番…?)
こんな変わった奴が、私の運命の番…?
この、ダラしなさそうな奴が?てか、αかコイツ!?
運命の番である男から、Aは目を逸らせない。男も、Aから目を離そうとはしなかった。
それは向こうも、Aが運命の番だと気付いたからだろう。
でも不味い。フェロモン抑制剤を飲んできたというのに、運命の番を目にした途端、Aの体は収まることを知らない。
この感覚は、…ヒートだ。なぜこのタイミングで?
(こんなにも、すごいものなの…?)
そもそも、運命の番なんて会う確率は0%に近いのだ。この広い世界で、運命の番に出会えること自体が奇跡なのだから。
Aはくだらない、と顔を歪ませる。
(あんな男が私の運命の番だなんて、絶対にあるはずがない…!なにかの間違いよッ!)
試験監督「こら、前を向きなさい」
「!」
試験監督に注意され、我に返って前を向く。
どんどん熱くなる体に、今は耐えてくれと、Aは必死にテストを解いた。
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作者名:あっきー | 作成日時:2019年5月1日 12時