10話 リューク ページ12
コンコン
母「Aー？」
「！」
部屋のドアのノックと共に、母の声がする。
そういえば、今日の夕飯は食べなかったんだ。きっと私を心配して、様子を見に来たのだろう。
Aはすぐにドアを開けようとして、思い止まった。
リュ「なんだ、さっきも言っただろう？お前にしか俺の姿は見えないって」
「…」
その死神の言葉を信じ、Aがゆっくりとドアを開ければ、大きなカゴいっぱいにリンゴを持った母が、そこに立っていた。
Aの顔色を見て、母は安心したようにため息をもらす。
母「もーA！何も食べないで引き籠もって！」
「あはは、ごめんお母さん。勉強で忙しくてさー」
母「ほら、ご近所さんにリンゴ貰ったから食べなさい」
「うん、ありがとう！」
大量にリンゴを受け取ると、母は勉強頑張ってね、とAにエールを送り、下へと降りていった。
母の後ろ姿を見届けたAは、ゆっくりとドアを閉めて、リンゴを机の上に置く。
「ねぇ、死神さん」
リュ「リュークでいい。なんだ？」
リュークはAの部屋を物色した後、先ほど母から貰ったリンゴを、勝手に口にした。
バリバリボリボリとリンゴを貪り食うその姿は、お世辞にも上品とは言えない。が、Aはあまり気にならなかった。
「なんで人間界にノートを落としたの？」
リュ「…」
「…リューク？」
リュ「うまい」
「え？」
リュークはそう言うと、勢いよく残りのリンゴにも手をつけ、一つ残らず食べてしまった。
リュークの食いっぷりに、Aは唖然とする。
「…そんなに美味しかったの？」
リュ「あぁ、じゅーしーっていうの？うめえな」
「ふーん…？」
この死神、リンゴが好きなのか。
もっと上手いもんねーのか？なんて呑気に聞いてくる死神に、スナック菓子でも食べさせてやろうかと、Aはリビングへと足を運ぶのであった。
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作者名：あっきー | 作成日時：2019年5月1日 12時
