鈍感スクランブル～斉藤壮馬・蒼井翔太～ (ページ32)

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story 29 ~akito story~ ページ32

春人side

あれは、俺が９歳

兄貴が１２歳のとき。

夏休みだった。

長い８月の日。

俺たちは、家族でコテージに来てた。

このコテージは叔父さんが管理してる場所で、

夏休みには必ず来る場所だった。

部屋がたくさんあって、

広いリビングに面しているキッチン。

そこからは、広い緑の庭が見えて

バーベキューするのが定番。

東には、何に使うのか分からないけど、

壁の一部が鏡になった防音スタジオがあった。

その近くには、いくつか小さな部屋があり

窓はなく、ピアノが一台置いてあるだけ。

兄貴はいつもそこでピアノを弾いていた。

春「あー！またピアノ弾いてるー！！」

秋「春人もやりたい？」

春「オレ、ピアノ弾けへんわ！！」

秋「せやったな！おこちゃまには難しいからなぁ～？」

春「なんや、意地悪でオレに『やりたい？』なんて聞いたん？」

秋「あれ、気づいちゃった？」

春「も～！！！」

いつもそう言って、俺を小馬鹿にしてくる兄貴。

でも、ピアノを弾ける兄貴は

ガキの俺には格好よく見えた。

キラキラしていて、楽しそうだった。

兄貴は

「若葉とピアノ弾けるのが嬉しいんだー！」

って言って、ピアノを弾き続ける。

次の年、

兄貴が１３歳になって

俺が１０歳になった。

その年の夏休み、

いつも一週間いるコテージも

４日しかいれなかった。

兄貴が病気になった。