２人の恋２

俺の本気 ページ41

【結弦】

Aさんは鈍い。それはいい意味でも悪い意味でも、だ。

さっき彼女は“言う必要ないから”ってハッキリ言った。

俺との関係をお父さんに“言う必要ないから”って。

それは、俺との関係がその程度だって言ってるのと同じ意味になるってことに気付いてない。

もちろんそんな風に思ってないことはわかってるけど、俺だって傷つく。

俺とのことは誰にも言ってないから安心して、とも言った。

マスコミのことを心配してそう言ってくれてることはわかってる。
それは彼女の善意なんだってことも。

だけど彼女はわかってない。

俺が本当は２人の関係を周りに知られたっていいと思ってること。
むしろ俺たちが恋人同士であることを公表したいくらい本気なんだってこと。

本当にそうしたら生活に支障が出るくらいの騒ぎになるから隠すだけで、
２人の関係を知られたくないからじゃない。

そこを全くと言っていいほどわかってない。

でも今はそれでもいい。

少しずつ俺の本気をわからせていって、最終的には俺との未来を選んでくれればいい。

「はい。今度は人参もプレゼント！」

俺がそんなことを考えてるとも知らずに皿を差し出す彼女の顔を覗き込んで言う。

「俺、他にも食べたいものがある」

「……」

無言で恥ずかしがっててめちゃくちゃ可愛い。

「Aさん、今日疲れてる？俺、練習までここにいたいんだけど」

「いいよ。練習何時から？」

「今日は１２時」

「そっか。明日も仕事だから私は途中で寝ちゃうと思うけど、また鍵かけて出てってもらえる？」

「それって俺も一緒にベッドにいていいの？何もせずにはいられないけど」

「いいに決まってる…」

Aさんとの、こんな幸せなやりとりを手放したくない。

この先も、ずっと。

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