２人の片想い

告白 ページ42

結局、俺が名乗りをあげないことには、いつか誰かが彼女を俺の前からさらってしまうということだ。


今、坂本がAさんに振られて、とりあえず俺とAさんの今の関係が保たれたところで、そのいつかは必ず来る。


その時俺はどうする。


同時に仮にもし、Aさんと俺が付き合えることになったとしても素直には喜べない気がした。


俺はまだ今後の方針を決めていない。


仙台に留まるかどうかもわからない。


もし留まったとしても、多忙な仕事にスケートの練習。


今のように会っていられるとは思えないし、俺は有名になり過ぎている。


彼女の日常生活にも支障をきたしかねない。


いろいろ考えると、やっぱり彼女の相手は俺じゃない方がいいのかもしれない。


実際そう思ったから、彼女もお見合いの時にああして断ったんじゃないのか。


俺もそう思ったから、あの時は連絡先さえ交換しなかった。


だけど結局俺は彼女に会いたくて会いたくて、会える保証もないのにリンクをウロウロ探し回った。


そして今も、あの時と同じように、ただAさんに会いたい。


本当にそれだけだった。


起き上がって、顔を洗って、朝食兼昼食を食べる。


軽くストレッチをして窓の外を眺める。


しばらく考えて、スマホを手に取った。








【主人公】

「関原主任のことがずっと好きでした。これからも俺とプライベートで会ってくれませんか」


坂本くんが真剣な顔で私にそう告げたのは、食事も終わりにさしかかった時だった。


結弦くんが言った通りだった。


今日、お昼前に家に来てくれた坂本くんを見た時、どこかいつもの坂本くんとは違う気がした。


いつもの坂本くんなんだけど、私服のせいもあるし、周りに職場の人がいないせいもあるし、会社じゃないせいもある。


坂本くんは、かわいい後輩でも子犬でもなくて、普通の男の人だった。


そのことに気付いた時、妙に焦ってしまった。


いつも自分のことを『僕』と言っていた坂本くんが、今日は自分のことを『俺』と言っている。


ただそれだけのことなのに、坂本くんと家で２人きりになろうとした自分がとても浅はかだったのだと悟った。


「えっと。坂本くんは私なんて眼中にないと思ってたから、びっくりだな」


どうしたらいいかわからず、とりあえずそう言った。


「そうですよね。俺、ずっと自分の気持ち隠してたんで。仕事上、主任に気を遣わせたくなくて」


「そうだったんだ…」


「…そうです」

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