２人の片想い

会いたい ページ23

【主人公】

その休日、銀行の組合行事の手伝いに駆り出され、朝からスケートリンクで立ち働いていた。


しばらくして手伝いがひと段落したところで、「今なら滑ってきてもいい」と言われたので、久しぶりにスケートをすることにした。


昔、２回だけ滑ったことがあるくらいで、ほぼ経験はなかったけど、滑り出すと意外にもスムーズに滑ることが出来た。


後ろから一緒に手伝いに駆り出された後輩の坂本くんが来たので、しばらく一緒に滑る。


やってみると結構楽しいもんだね、なんて話していた。




羽生さんもここで夜、滑っているのかな。

毎日、頑張っているのかな。

ここから世界に羽ばたいていったのかな。




そんなことを思ってみる。


前に滑るだけで難しいのに、後ろに滑ったり、片足で滑ったり、まして４回転するとか、本当に神業としか思えない。


氷は硬く、滑るとゴーゴーいう。


この上で転倒したりとか、すごく痛いだろうなと身震いする。


しばらくして足が疲れたので、坂本くんにそう伝えて、もう上がることにした。


この後も、行事の終わりまで手伝いが続く。


それに備えたかった。


スケート靴を返却カゴに入れて、ふと右を見るとそこにはギャラリーがあった。


金メダリストの荒川静香さんや、羽生さんの展示がある。


入って見学することにした。


羽生さんの写真の前で立ち止まってしばらく見つめていた。


すごい人だなぁ。かっこいいなぁ。


この人とお見合いをしたなんて、本当に信じられなかった。


すごく楽しかったな。


また会いたい・・・と思った瞬間、そっと展示の写真に触れてしまっていた。


おっといけないぞ、変態が銀行の人にバレる！！と思って手を引っ込めて、誰にも見られてなかったか確認しようと後ろを振り返ると。




そこには、その、羽生さんが、いた。

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