２人の片想い

見惚れるとは ページ17

【主人公】

羽生さんを目の前にして、恐縮するのと緊張するのとで何も話せなくなってしまい。


このままだと困らせてしまうと悟った私はアルコールの力を借りることにした。


う・・。ビールはそんなに得意じゃないけど、ビールしか思いつかなかった、緊張で。


アルコールが体内に入ると少し安心して、いろいろお話したい気分になってきた。


ついうっかり私の心に秘めていた『恐怖の３大ジジイ』の話をしてしまったら、羽生さんは笑ってくれて話して良かったと思えた。


伝説の羽生結弦が目の前にいることが信じられない。


この間はパニックになっていてよく見れなかったけど、目の前にいる羽生さんは３０歳には見えないくらい肌がツヤツヤで全てのパーツがキレイでかっこよかった。


中性的な人というイメージがあったけど、スーツの袖から出ている手首は男らしく骨ばっていたし、きれいな首には喉仏が浮き出ている。


そこから発せられる声もすごくいい・・・。


見惚れるってこういう時に使う言葉なのかも。


ってどこを見てるんだ私って超変態、と自分を戒める。


こんなすごい人を目の前にして舞い上がってしまったけれど。


冷静になると私の相手としては絶対にないと思う、というか、羽生さんの相手として私は絶対にないというのが正しい表現だ。


今日のことは夢だ。
だから今日は時間まで楽しくお話して、きれいに断られようと素直に思えた。


それにしても・・。
空気が和んだので、私は気になっていたことを口にしてみる。


「あの、それで・・。この間、銀行に羽生さんが来られたことと、今回のお見合いって偶然じゃないですよね？」


「・・・」


羽生さんは黙ってしまった。


何か悪いことを聞いてしまったんだろうか。


どうしたのかなと思っていると、さっきまでとは違う真剣な表情でその事情を話し始めてくれた。

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