秋近し哀遠し

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電車を降りて海につき、誰もいない砂浜で近くの閉まってる海の家からバケツを拝借し、コンビニで買ったライターを使い花火に火をつける


まだ真っ暗ではなく、薄明るいけど、
日は確実に短くなっている。
だから･･･きっとすぐ暗くなる


何て書いたか当ててみて、とか。
そんな馬鹿みたいなことをし合ったり
本当に楽しい時間を過ごしてた。


好きだよ、
俺は月に帰ってしまうけど

俺の世界でのお前は俺のことなんて
ちっとも好きじゃない。
そんな世界に戻るんだ


優しい瞳も笑い声も向けてくれない


横尾さんにベッタリなお前の元に戻るんだ


コッチの俺が藤ヶ谷のことをどう思ってるかは知らないけど、多分好きだと思う。
だから、もしそうなら。
二人で幸せになってーーー･･･



誕生日なんて
待たなくてもいい


俺はお前が好きだよ


藤ヶ谷。



「花火なんて久しぶり！」
「だろー！やりたかったんだよな」


一通りはしゃいで花火をして
バケツは消火済みの花火で溢れてきていた


「･･･タマとはやったの？」
「玉森とはやってない」


藤ヶ谷とこれから一週間過ごすように
玉森とも一週間過ごした。
楽しかった、かけがえのない時間だった


「･･･タマと何かあった？」


その、何かは…なに？


「ないよー、ただただ楽しかった」


ホントに。


「そっか･･･」


ケツが汚れるのを承知で二人で砂浜の上に腰を下ろすと、目の前には漆黒の海が広がる



「藤ヶ谷ともいっぱい思い出作りたい」
「･･･思い出、」


向こうに行っても思い出せるように


「俺は作りたくない」
「･･･え？」


低い声が聞こえてくる
波の音に消されてしまうんじゃないかというぐらいの低い声


「北山との時間を思い出になんてしたくない」


ああ、好きだ。
ホントに、
いつの間に、こんなにも好きなんだろう


好きになってたんだろう


藤ヶ谷の手のひらが頬に触れる
手のひらは砂で汚れていて、砂のざらっとした感じが頬を優しく刺激する


「･･･俺も、思い出になんかしたくないよ」


そう言うと、


「初めて？」


色気のない独占欲の言葉が降ってくる
玉森とは唇にはキスしていない、
っつーか、今ここでそれ聞く？


「そーだけど」
「･･･貰っていいの？」


何かあげたくなくなってきた


「･･･藤ヶ谷も初めてなら、いいけど」


そう返すと、次の瞬間。
優しく柔らかい唇に塞がれていた


何度も何度も。

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