秋近し哀遠し

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黒板に書かれるチョークの音と、今日は比較的気温が低く、雲がかってる関係かヒグラシの鳴き声が聞こえる。

ヒグラシは朝夕の気温が下がった時に鳴くのが通常だが、今日は曇のためか、夏の終わりで気温が下がってきている関係か午前11時という時間にも関わらず鳴いていた。


普通のセミの声とは違う、声。
秋の季語ともなっている。
と、今古典の補習でやっている。
そうなのか。セミでも、夏じゃないんだな


古典の先生は余談が好きだから
こう言った身近な出来事を教えてくれる
受験のための勉強だけじゃないこの古典の授業が嫌いじゃなかった。



チョークとヒグラシの音を聞きながら
窓から、小風に吹かれている緑の葉を見ながら以前テレビでやっていたことを思い出していた。

今年は異常な猛暑だった。
そして偶然テレビで見た蚊の生態は興味深かった。
どんな生物もその生物にとっての
適温があるらしく、蚊の場合はそれが25〜30度であると言われてるらしい。
35度以上になると陰に隠れたりと動きが鈍くなるらしい。
通りで刺されないなーと思ったはずだ。


貴重とも言える無駄な知識を得て
油断していたころ、最近は気温も下がり蚊に刺され出した。


･･･思い出したら痒くなってきた。
いつのまに刺されたのか首元を掻きむしっていると、ふと視線を感じてしまい斜め後ろに顔を向ける


「･････････！」



･･･バッチリと藤ヶ谷と目が合ってしまった。
・・・藤ヶ谷は眉を寄せ、眉間に皺を寄せている


唇を突き出し、「んー」とまるで不貞腐れてるような、そんな仕草、表情。



"俺が北山に誤解されたくないんだよ"


･･･なんだよ、それ。
他校の可愛い女子に鼻の下伸ばしてたじゃねーかよ。
それなのになんで、俺に誤解されたくねーんだよ。


っつーか、誤解なのか！？
本当に鼻の下伸ばしてたんじゃねーか？
誤解っていうことは何かしら自覚があるってことだろ！？


掻きむしってヒリヒリするように
心もなぜだかヒリヒリする


チョークの音がしないなぁと顔を上げると、先生が鬼のような顔をして目の前に立っていた


「･･･北山くん。どこを見てるのかね？」
「･･････夏の終わり、を」
「風流だねー、」
「ですよねー･･･」
「では、この問題を解いてみなさい」


･･･どの問題でしょう？
先生。


引き攣った口角をくいっと戻し、
使いたくないワザをつかう


このおじいちゃん先生は、根本的には甘いのだ

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