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同じ部署と言えど顔を合わせるタイミングはあってないようなもの。たまたま見掛けたら話しに来てくれるというスタイルは今も健在だけど、そんなに話し込める時間はない。
「今日も暑いね。外に出たくないから帰りたくないな」
「それはもう会社に泊まるしかないですね」
「ええ?Aちゃんと一緒なら帰れるけどなあ」
「ダメですよ。私はまだ仕事あるので」
先輩との会話は冗談交じりで返せるくらいにはなった。なに言われても真に受けないようにメンタル鍛えられた気もする。
でも、
「Aちゃん本当に可愛い。マジでタイプ」
「あー、ありがとうございます?」
「信じてないでしょ?まあなに言ってんだって感じだろうけどさ、本当にタイプなんだよね」
「また言ってる。冗談ってわかってますけど、もし私が本気にしちゃったらどうするんですか?」
いつもみたいに笑って、笑い飛ばして軽く受け流してくれると思ってた。
「それは、嬉しいよ。でも後々のリスクを考えるとね、迂闊には手を出せないよね。だから我慢してる」
「…冗談ですよね?」
「まあ、半々かな。半分本気」
「9割冗談って言ってくださいよ、そこは」
「あはは、半分は多かったか」
じゃあね、と先輩は帰っていったけど仕事中も帰ってからも先輩の言葉がずっと頭から離れなかった。
「昨日はごめんね?僕ヤバいこと言ったなって思って帰ってから反省したよ」
「本当ですよ。誰かに聞かれたら誤解を生みかねない」
「だよね!まあAちゃんなら何言ってもわかってくれてるって思ってるから」
たまたま廊下で会った時に話し掛けられて謝られた。まあそうだよね、これからも部署内で顔を合わせるわけだし、気まずくなるのは嫌だ。
「でもさ、Aちゃんがタイプってのは本当なんだよ?」
「えー?冗談だと思ってましたよ」
うそ。本当なら嬉しいって思った。舞い上がってた。
「そうなの?でも本当だよ。あとさ、私が本気にしたらって言ってたけど、Aちゃんはしっかりしてるからそんなことしないでしょ」
「えー?…わかんないですよ?」
「ええ!?だ、大丈夫だよ!Aちゃんは間違えたりしないってわかってるから。じゃあね!」
向こうから歩いてくる人に気が付いて先輩は立ち去った。
「私が…私が言わなきゃいいってことか」
私もずっと素敵だなって思ってましたよ、って言ったら先輩との関係は変わるのだろうか。
▽▽
実は両片想いだった、みたいなお話。
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作者名:亜杞 | 作者ホームページ:
作成日時:2023年6月3日 18時