解放ウルフ�� ページ21
「無意識下って……」
アネモネさんが、今日何度目かのため息をつく。貴方にはほとほと愛想が尽きたわ、そんなニュアンスを込めて。
「じゃあ、結局、初めからあんたを吊っておけば良かったんじゃない」
「本当だね。レポートに追われるくじらくんは、早く帰りたいが為に嘘をついたけど……残念だったね。勝ってしまったからには、二回戦だよ」
イルカがにこっと微笑む。自分は負けたくせに、何故そこまで楽しそうなのか。やっぱりこいつは少し変わっているのか。
「二回戦って……マジかよ……」
「サクライさんが言っていたよね、連勝出来たのにって。彼女はこのゲームで二回目だったんだ。君にとっての二回目が待ってるよ」
「……棄権出来ないかな？」
「無理よ」と言ったのは、心底呆れた様子のアネモネさん。
「ルームマスターの意向にもよるけど、基本的に途中棄権は出来なくなっているわ。それに、勝ったんだったら進んでくれないと、あたし達が負ける意味が無くなるじゃない」
……二人は処刑されないのだろうか？ イルカが「ドアはあっちだよ」と俺の背後を指差す。俺が出て行くまで処刑は執行されないのか？
「行ってらっしゃい。次のゲームも頑張ってね、くじらくん」
来た時とは違う壁に、来た時と全く同じ、錆びた鉄の扉があった。部屋に入る前は固かったドアノブは、少し握っただけで簡単に回った。あのドアを開きにくくさせていたのは、俺の緊張と不安なのかもしれない。
「……あのさ」
ドアを手前に開いた。後ろに続くのは、この部屋と同じようなコンクリートの壁をした廊下。灰色の中に消える前に、俺は背後に向かって聞いた。
「……何で違ったんだろうな」
「え？」
イルカが訊く。「違ったって、何が？」と言ったこいつだけ、このゲームで疑いらしい疑いを向けられていない。
「アネモネさんのカードは、何で夜なんだろう。彼女は人狼でもないのに」
「あたしは知らないけど、その辺りはルームマスターの意向でしょ？ ゲームを盛り上げようとしたとか……」
だとしたら、と俺は思った。だとしたら俺の影もルームマスターの策略で、本当は何も意味は無いんじゃないのか。カードの絵柄は全員何かしらの違いを持っていて、絵柄を言い合う事に意味はなかったんじゃないのか？
「……カードの絵柄に、もし何の意味も無いんだとしたら？ 俺が、人狼じゃないとしたら」
俺はそこで初めて、室内の二人を振り返った。
「人狼は、お前だ。イルカ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くろーさぎ(プロフ) - みるくプリンさん» ありがとうございます……！！そう言って頂けると大変励みになります！閲覧ありがとうございます！(* > <)ﾍﾟｺﾘ (2019年8月10日 17時) (
レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
みるくプリン(プロフ) - こんにちは。面白くて一気読みしました！普段、恋愛系の作品しか読まないのですが、こういうのも良いですね。これからも頑張ってくださいっ(*´∀`) (2019年8月10日 17時) (レス) id: 7db76bcf0c (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - ランさん» コメントありがとうございます！！はい、更新頑張らせて頂きます！閲覧ありがとうございました！m(_ _)m (2019年7月2日 16時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
ラン(プロフ) - イベントの方から来ました。読ませてもらいましたが、人狼ゲームのお話はあまり読んだことがなかったのでとても面白いと感じました。更新楽しみにしています♪ (2019年7月2日 15時) (レス) id: 48cb23a0f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
