第四百二十八話 精神暴走 ページ17
「 うわあっ!」
私はエアリエルの魔法に身を任せ、吾郎の力に反発するかのように身体を水密隔壁の内側へと持ってこられた。水密隔壁が閉鎖される音がする。
「 ……は?」
この一瞬の出来事に、怪盗団も明智も、状況を理解出来ずにいた。わかったことは、彼女が何かを起こしたということのみ。
「 さっきのはなんだ!?」
「 A!大丈夫なのか!?」
隔壁の向こうで彼らが私を心配する声が聞こえる。
「 私は大丈夫!こっちは任せて!それよりも… 」
シャドウを見ると、何か不審な行動しているように感じた。その内の一人が全体に指示をし、数体が姿を消した。私は、奴らが怪盗団の方に追っ手を送ったのではないか、と思う。
「 みんなの方にシャドウが来るかも!逃げて!」
「 マジかよ!」
「 リティ、絶対に帰ってこい。」
まさか今度は私がジョーカーにそう言われるなんて。
クスッと笑った。
「 もちろん!」
彼らが機関室を去る足音が聞こえる。その音を聞き届けて、私はひとまず胸を撫で下ろす。そんな私の肩を彼は強い力で掴んできた。
「 なんで戻ってきた!?俺がどんな思いで、お前を… 」
知ってるよ。あなたが私のことを守ろうとしてくれたこと。その記憶を見たもの。でもね、その未来は嫌だったの。
「 吾郎を失いたくない。」
「 …!」
「 吾郎がいない世界なんて嫌だよ。」
「 お前は、本当に…!」
どこか悲しそうで、悔しそうで、嬉しそうな顔だった。その顔を見て、私はこの人を失いたくないという気持ちがより強まる。
絶対に生きて帰らなくてはいけない。そのためには、手段なんか選んでいられない。
「 戻ってきたということは勝算があるんだよな?」
「 …実をいうと気力も体力もカツカツで。だから、吾郎にお願いがあるの。」
私に、精神暴走をかけて。
「 本気なのか!?あれは… 」
「 それくらいしないと、多分負けちゃう。」
苦渋の決断だった。先程の彼を見るに、精神暴走は諸刃の剣。彼の場合は不安定な精神状態に左右され、思うように力を発揮されていなかったが、上手く使うことができたらこの状況を打開することもできるはずだ。
「 …わかった。お前がやるなら俺もやる。」
「 大丈夫なの…?」
吾郎はさっきも自分に精神暴走を…
「 さあね。でもここで心中なんてクソくらえだ。」
「 …うん。そうだね。」
こんな所で死んでいられない。
さあ、始めよう。
私たちのショータイムを。
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すみれ(プロフ) - をしすさん» ありがとうございます!素敵と言って貰えるような作品に少しでもなっていたことを心から嬉しく思います。また描いていただいたイラストの素晴らしさを共有できて良かったです..!これからの展開も楽しんでいただけるように頑張りますので、楽しみにお待ちください♡ (11月4日 7時) (レス) @page50 id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
をしす - (文字数に収まらなかったのでここで失礼します…長文失礼しました) (11月4日 4時) (レス) @page19 id: 79c0c3fdd7 (このIDを非表示/違反報告)
をしす - やっぱり好き…。すみれさんの書くお話はどれも素敵すぎて読み終えた時に不思議な高揚感があります!そんな時にむぎさん、めもりさん、まりりさんの激カワイラスト達を見たらいてもたってもいられずコメントさせていただきました!これからも応援しています。 (11月4日 4時) (レス) @page19 id: 79c0c3fdd7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれ(プロフ) - もみじさん» ありがとうございます🥹久々のコメントがとても身に染みます…!オリジナルの部分を今回はかなり挟んだので、皆さんにどう思われるか少し不安でしたが、そう言っていただけてすごく嬉しいです。この先の展開も楽しんでいただけるように頑張ります! (9月11日 7時) (レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - コメント失礼します。ずっと前からこの作品が大好きです!話の構成がとても上手で、特に『運命を変えろ』のお話はワクワクしっぱなしでした…!!獅童戦やその先の展開がすごく楽しみです。作者様のペースで更新頑張ってください。陰ながら応援しています! (9月11日 7時) (レス) id: be2598a382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみれ | 作成日時:2023年8月19日 11時