第五百十話 彼だから ページ6
「やっぱり綺麗…」
「そうかな。この光景に僕は吐き気しか感じない。」
独り言として呟いた言葉を聞かれてしまっていたようで、決まりが悪くなった私は苦笑する。彼の少し棘を含んだ物言いにも慣れてきたと思っていたが、実際はまだまだのようだった。
「あはは…でも、今までのパレスと何か違うと思わない？こう、パレス特有の禍々しさみたいなものを感じないというか。」
「このパレスの主の心の現れだろう。」
ジョーカーのその言葉を聞いて、私は改めて考えてみる。今まで目にしてきたパレスはどれも欲望の源という言葉そのもので、禍々しく、おぞましい姿をしていた。
だが、このパレスはどうだろう。なぜ私はパレスに対して美しいと思うのだろう。答えはジョーカーが先に表した通り。パレスの主の心がそうであるから。
「心が綺麗な人なのかな。」
「僕からしたら、パレスが存在する時点で綺麗も何もないけどね。」
それはまあ一理ある、と思いつつも私はうーんと唸る。パレスの元となる歪んだ欲望はその全てが醜く汚いものではないと私は思う。まあ、これはあくまで私の考えなだけであり、彼と一致しないのも無理はないのだが。
「……」
彼の横顔を覗いて見た。こういう意見の不一致ですらも煩わしく感じない、むしろ心地よく感じるのは相手が彼だからだろう。
彼の考え方は私の持つそれとは大きく異なり、それ故にいつも私に新しい視野を広げてくれる。いつも色々なものを与えてくれる。
「ちなみに君たちが前回ここに来た時はどこまで進めたか、覚えてる？」
「たぶん、あの扉の向こうだったと思います。そこで先輩達に助けていただきました。」
「なるほど、入り口付近までのことしかわからないか…とりあえず、奥に進んでみようか。」
◇◇◇
初めてこのパレスに潜入したときには私たち以外の人影はなかった。だが今はそんな様子を想像出来ないほどに沢山の人々で溢れかえっている。
この数ヶ月間に、パレスの主が大きく変化していることが顕になっていた。
『ペイシェントの皆様、ようこそお越しくださいました。ここでは皆様のご希望に沿うためにそれぞれの施設へご案内します。あなた方、一人ひとりに寄り添って私たちがサポートします。安心してください、どんな人でも幸せになることが出来ます。』
「なんだか、研究所っていうよりも…」
「精神科にいるかのような感覚ですね。」
不思議に思うところは山ほどあるが、私たちは先を目指し続けた。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
