第五百五十一話 操り人形 ページ47
優しいピアノの旋律が聴こえてくる気がする。以前潜入した際と同じ、美しい景観だ。手の平を上に向け、落ちてくる白い羽を持ってみた。
＿＿＿綺麗だなあ。
「まずは丸喜の居場所を探ろう。だけど、あまり無駄足を踏むのはごめんだね。確かエレベーターを昇った先、ひらけた場所で音声案内があったろ」
「なら音声案内で私たちに話しかけてくるのかも」
「有り得るな」
「まあ、進まないことには何も始まらない。行くよ」
◇◇◇
『特別指定ペイシェントを発見しました。ご案内を開始します』
待合室のような場所へと着くと、丁寧な口調のアナウンスがリティらに語りかけてきた。それはそれは柔らかく、患者の心を落ち着ける声で。丸喜の声と近しいものを感じた。
『現在、講堂を開場しております。主はそこでお待ちしております。また、お探しの女性も一緒です。大変御手数ですが、左手の扉から講堂へお越しください』
「やっぱり、ご丁寧に向こうから居場所を伝えてきたか」
「…先生らしいな」
彼はきっと姑息とか卑怯とか、そういう風に言われるような行動はしないだろう。どんなときも正々堂々。彼なら、きっとそう。
リティたちはアナウンスの言う通りに左の扉を開いた。少し進めば目的の講堂が待ち構えている。照明が彼女らを照らした。
「よく来てくれたね」
正面には『怖がらず、新しい可能性へ踏み出そう』との横断幕が掲げてある。新しい可能性。それはリティたちで言う、辛い現実から目を背け、丸喜の幸せを受け入れた先ということなのだろうか。
「すみれは大丈夫なのか」
「眠っているだけだよ。最初から危害を加えるつもりはないんだ。彼女の心が落ち着き次第、思い出してもらうよ。自分が現実で望んでいた姿をね」
「望んでた姿ね…つまるとこ、自己満足のために他人を洗脳しているだけでしょう」
「…そう思われるのは覚悟のうえだよ。けど、その自己満足で沢山の人が幸せになるなら、素晴らしいこととは思わないか？」
＿＿＿貴方の考えを、押し付けないでよ。
やっとわかった。彼の言葉が腑に落ちなかった理由。クロウの言う通り、彼の行動はただの自己満足で。そんな世界で生きていくということは、彼の演出する劇を演じ続けるのと同義。つまり、彼の
「やっぱり、受け入れられません」
＿＿＿もう誰かの操り人形になるのは嫌だ。私は私の人生を生きる。私の、私たちの自由は誰にも奪わせない。
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
