第五百四十話 自分で気付いて ページ36
この幸せを受け入れたら、真が抱えてきた痛みは全てなくなる。同時に彼女が乗り越えたものもなくなる。Aにとっては後者を受け入れることの方が耐え難かった。
「…私、真のことすごいって思っててさ」
「ええっ、突然なに？」
「ううん、前から思ってたの。辛い現実に向き合って、大切な家族を救ったこと。本当にすごいなって。」
「…何、言ってるの？」
「私たちが大変な状況に陥った時だって、真の冷静な意見がいつも私たちを救ってくれた。いま、私がここにいるのも真がいてくれたからだよ。」
「そんな…私の方こそ、みんながいたから。居場所ができたから…」
その時、真の頭に記憶が流れる。冴のパレスでの記憶だ。正義に振り回され、暴走していた姉の姿。直視できずに目を背けていたこともあった。だがそれではいけないと己を鼓舞して、俯く顔を上げたこと。元の現実でなければ、彼女はそうなれなかった。
「A、私…」
「待ってるね。私たちには真が必要だよ。」
＿＿＿どうか彼女自身が「この世界は駄目だ」と思ってくれますように。
そんな自分勝手な願いを抱く自分に少しの嫌気を感じながらも、Aは胸のモヤを心の奥へと追いやる。その代わりに蓮から貰った言葉を胸の内で唱え、小さく息を吐いた。
＿＿＿私たちは正しいと思ったことを貫き続ける。
そう考えると前を向き続けていられる気がする。その言葉はAを導く、太陽のような存在となっていた。
◇◇◇
家へと帰る途中、またしてもAはモルガナと鉢合わせした。今度はルブランに足が赴いていたというわけではなく、本当にたまたま。Aは予期せぬ遭遇に目を丸くしたが、モルガナは何故か安堵の表情を見せた。
「やっと見つけた。オマエを探してたんだ」
「私？」
「最近、蓮の様子が変なんだよ。ワガハイを変な目でじっと見つめてきたり、昼間はぷらぷらどこかへ行ったり…何か知ってることはないか？」
蓮はAと同じく、昼間は仲間への説得を試みている。その行動から得られた結果はお互い好ましいものではなかったが、自分の心に従うという考えの元、二人は動き続けていた。
「…知ってるよ。でもモルガナには言えないの」
「なんでだよ」
Aは目元に力を溜めた。そうしないと生暖かい液体がその身からこぼれ落ちてしまいそうだった。
「自分で気付いて欲しいから」
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
