第五百三十九話 嘘はつけない ページ35
井ノ上線へと続く通路の途中で、Aは冴と楽しそうに話す真の姿を見つけた。ズキッと痛む胸をなだめ、蓮から貰った言葉を思い出して彼女らの前へと姿を現す。
「A、奇遇ね」
「私たちが会うのは年越しぶりよね。あけましておめでとう、Aちゃん」
「あけましておめでとうございます、冴さん！」
年明けの挨拶も済んだところで、Aは彼女らに「今日はなんでここに？」と問う。二人の楽しげな様子から、真の返答の内容を勝手に想像してしまう。まだ言われたわけではないのに。きっとそうだろうとAの心が決めつけている。
＿＿＿真も、他のみんなと同じように…
「今、ちょうど買い物に来ててね。実はうちのお父さんが警視総監賞を貰うことになって、そのお祝いなの！」
「真の…お父さん」
「ちょっと真、あまり大声で言うことじゃないわよ。Aちゃんも困ってるわ」
「あ、ごめんなさい、つい。でもお父さんの頑張りが認められたみたいで嬉しくって」
「それはまあ、私も同じよ。さあ、材料は何を買って帰るの？」
うーん、と真は静かに考え込む。そんな彼女を無意識に目を細めて見てしまう。悩んでいる姿ですらも幸せそうに感じる。
「お姉ちゃんの誕生日にはナスのお味噌汁を作ったよね」
「真の誕生日はアジフライだっけ？どうしても食べたいって、お父さんに作らせてたじゃない」
「ちょっとお姉ちゃん！作らせたんじゃなくて、作ってくれたの！」
真が望んだ現実。亡くした父親と優しい姉と日々を過ごす幸せな現実。元の世界でも彼女ら二人は仲のいい姉妹だった。だが本当の世界では見ることのできなかった、柔らかく優しい空気がそこにはあった。
「そうだ、Aもご飯を食べにくる？といっても、大したものは用意できないんだけど…」
「あはは、真が作るものはきっと全部美味しいよ」
「ふふ、Aちゃんったら大胆。まるで真のことを口説いてるみたい」
「へ、変なこと言わないで、お姉ちゃん！」
＿＿＿ごめんね、真。
これは真のためではない、自分のための行動。それが貴女を傷つけてしまう行動だったとしても、自分の心に嘘はつきたくないから。止まることはできないの。
「幸せだね、真」
「へっ？あ、うん…幸せよ」
「でもこの幸せは…本当に受け入れていいものなのかな」
「え…？」
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
