第五百三十一話 乗り越えた過去 ページ27
Aが志帆と過ごしたのは一、二ヶ月と決して長いと言えるようなものではなかった。だが、転校してきてすぐに仲良くしてくれたのが彼女たちであり、Aにとって彼女は過ごした月日どれだけ短くともその存在は大きかった。
「聞いてよ、A。志帆、こないだの大会でも大活躍だったんだよ。スタメン出場してさ、ポイントもバンバン入れちゃって！」
「もう、杏ったら。そんなにいっぱい言っちゃ、Aちゃんがびっくりしちゃうよ」
「あはは、大丈夫だよ。志帆ちゃんがすっごく頑張ったってのが杏の熱弁で伝わってきたし！」
「でしょでしょ？」
＿＿＿ああ、楽しいな。
こんな生活が続いたら幸せだろうな。志帆は好きなバレーを続けて、成果を残して。杏はそんな彼女を熱心に応援して。泣く泣く別れることになってしまった本当の現実では見ることのできなかったであろう、二人の笑顔。
「あとねあとね！志帆、うちの学校に戻ってくるんだって！」
「やっぱり秀尽ってバレーの強豪校だから。どうしてもって言ったら親も納得してくれて」
「親の都合で転校したのは悲しかったけど、これで全部元通りだよね」
都合のいいように事実が塗り替えられている。志帆は学園から鴨志田はいなくなったが、秀尽で過ごしていれば色々なレッテルが付きまとうことになるから、という理由で転校した。そのはずなのに。もしかしたら、鴨志田という存在も彼女とは何の関係もないという風に認知が操作されているのかもしれない。
「…幸せ、だね」
「あはっ、なあに。いきなり」
そうであって欲しかった。志帆の身に何も起こらず、当たり前の日々を過ごして欲しかった。ううん、そんな彼女と一緒に過ごしていたかった。
＿＿＿でも、さ。
「このままで、本当にいいのかな？」
「え…？」
辛いことに立ち向かうのが絶対に正しいとは言えない。苦しみを乗り越えたり、何かを我武者羅に頑張ることを美学だと考えてしまう部分は自分にもある。だけどこれはそういう理由ではなくて。そういうことではなくて。
「逃げるな」
「！！」
「…なんて。そんなの難しいよね」
幸せが目の前にあるというのにそれを自分から手放すなんて。それが表しようのないほど難しいことだっていうのはわかってる。
＿＿＿これは私のエゴ。
「でもさ、乗り越えた過去がなくなるのは…いやだ」
「乗り越えた過去…？うう"っ！」
第五百三十二話 手放したくない→←第五百三十話 懐かしい笑顔
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
