第五百二十六話 記憶を呼び起こす ページ22
あの日、夢で見たものと一緒。彼を、大事な人を失った時の記憶。身体の震え、喉の乾き、目の奥の熱。思い出したくないあの日の感覚。全てが一瞬にして彼女へと襲いかかる。
＿＿＿嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。思い出したくない。思い出したくない。思い出したくない。
頭を抱え、脳の中をぐるぐると回るその記憶に侵され続ける。苦しい。すごく苦しい。胸を劈く痛み。涙。汗。止めようにも止めることの出来ない身体の反応にリティはのたうち回ってしまう。
「おい！リティ！しっかりしろッ！」
戦いを終えたクロウが抱きしめてくれるも、荒い息がおさまることはなかった。他のことを何も考えることのできない真っ暗な部屋に一人閉じ込められたかのような、そんな感覚に彼女は苦しみ続けている。
「ちょっと意地悪しすぎたかな」
パチンと丸喜が指を鳴らすと、元の感覚が戻ってくる。荒い息も次第に落ち着き、涙も汗もいつの間にか止まっていた。
「今、彼女に何を…」
「わかるかい。君たちがしようとしていることは、こういうことなんだよ。僕の現実をなくすということは、こういうことなんだよ」
身体の状態が落ち着いたとはいえ、一時は謎の興奮状態に陥ったリティはクロウの腕の中で力なくぐったりとしていた。そんな彼女を放っておいて、このまま実力行使で丸喜と戦うなんてことは彼らにはできなかった。
「一度時間をくれないか。百聞は一見にしかずと言う。僕が言葉で説明するよりも、今のように実際に見てきて欲しいんだ。僕の現実を」
「見たところで、意志は変わらない」
「そうかな。きっと、君の仲間たちも幸せそうに過ごしているはずだけど」
「うぅ…すみ、れちゃん……」
リティが目をゆっくりと開け、前に手を伸ばした。その手はすみれの方を向いている。彼女の手は何も掴むことが出来ず、力なく下へと下げられる。
「彼女を返すことは出来ない。だけど彼女に危害は加えない。それは約束するよ」
「リティには危害を加えたくせによく言うな」
「彼女には僕が直接的に何かをしたわけじゃない。ただ、彼女の記憶を呼び起こしただけさ」
「呼び起こす、だと？」
今の発言、そしてすみれの認知への干渉から丸喜が精神を操ることのできる能力を持っていることがわかった。ただ力でねじ伏せればいいだけの相手と比べ物にならないほど厄介だ。と明智は歯を食いしばった。
「…一週間後、1月9日にまた会おう。その日までに、君たちの考えが変わってることを願ってる」
第五百二十七話 嫌な記憶が蘇る→←第五百二十五話 そうじゃないこと
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すみれ(プロフ) - すしをさん» いつも本当にありがとうございます🥹なんて素敵な自分ルールなのでしょう。すしをさんに早く見ていただけるように更新頑張りますね！いつもコメントに元気貰ってます。またいつでも優しいお言葉をお待ちしています🥰 (2月18日 21時) (
レス) id: 945d36a3b1 (このIDを非表示/違反報告)
すしを(プロフ) - 三学期だ〜！！すみれさんのお話は少し間を空けてから一気見するという自分ルールに縛られ(？)中々最後まで見られていませんでしたが、やはり素敵だ…。無理のない範囲での更新心よりお待ちしております (2月18日 1時) (レス) id: 83df5084ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみれ | 作成日時：2024年1月10日 17時
