勝負 ページ6
涼介サイド
侑李「ただいま、涼介」
涼介「おかえり」
有岡先生「俺もいるよ。もう少しで無菌室だろ？」
涼介「そうだね」
そうか、無菌室か。
先生に言われて、ようやく実感がわいてくる。
侑李「今日は僕、涼介と寝る」
有岡先生「おい、聞いてないぞ、お前……」
侑李「大ちゃん先生、だめ？」
有岡先生「……わーったよ、もう」
侑李の潤った瞳に上目遣いで見つめられたら、誰だって有岡先生みたいになるだろう。
ずっと一緒にいる俺だってなるもん。
「わかったよ」って、何でも許しちゃう。
有岡先生「話したいこと全部話しときな」
涼介「いつも通りでいいよ。ねぇ、侑李」
侑李「うん、じゃあ報告します！」
侑李はビシッと敬礼のポーズをした。
涼介「はい、お願いします」
侑李「今日は……」
学校での出来事を聞くのが、いつの間にか日課になっていた。
内容はかなりくだらない。
授業中眠かったけど頑張って睡魔に耐えていた、とか、スクールランチが美味しかったとか。
たまに面白い話もある。
校庭に生えている木の上にボールが乗って、それを取ろうとして投げたボールも乗ってしまったという話が俺のお気に入り。
真面目な顔して言うもんだから、お腹が痛くなるくらい笑ってしまった。
今日も、結構面白い話だった。
漫画で見るようなぶっ飛んだ話で、思わず「本当にあるんだ、そんなこと……」と言ってしまった。
そして何より、頑張って話してくれる侑李を見るのが嬉しかった。
侑李「今日の報告はこれで終わりです！」
涼介「はい、ありがとうございました」
有岡先生「こんなこと毎日やってるの？」
涼介「こんなことって、大事だよ？ 報告は」
侑李「そうだよ、先生」
俺と侑李にそう言われた有岡先生は「……ごめん」と全く納得していない顔で謝った。
それがなんだか変で、俺も侑李も笑った。
侑李「先生ってすぐ謝るよね」
有岡先生「んなことねぇよ」
涼介「いや、謝ってばっかだよ、最近」
有岡先生「うるせぇ！」
「２対１は卑怯だ」と叫んだ有岡先生に、侑李がボソッと「子供と大人だけどね」と言う。
侑李は可愛いけど、毒舌なんだよな、ちょっと。
有岡先生「涼介、侑李がグレたぁ」
侑李は首をかしげて「グレてないよ」と俺に訴えてくる。
有岡先生「俺もなめられたもんだな」
侑李「だって先生怒んないじゃん」
有岡先生「俺だって怒る……」
だんだん声が小さくなっていくのがおかしくて、俺と侑李はまた笑った。
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作者名：J | 作成日時：2020年9月29日 14時
