勝負１ ページ43
涼介サイド
有岡先生と話しながら病室の扉を開けると、侑李が「遅い！」と抱きついてきた。
侑李「今日は五時間授業！」
涼介「そーだったな……。ごめん侑李」
昨日そう言われた記憶が、今になって蘇ってきた。
侑李「涼介が僕より大ちゃん先生を選んだ。僕の涼介を
とられたぁ」
有岡先生「まあまあ、侑李、そんな拗ねるなよ。うん、
しょうがない。そんなときもあるからな」
勝ち誇ったような笑みを浮かべる有岡先生に、侑李は「先生に言われるとムカつく」と、ボソッと言った。
有岡先生「おぉ、急に毒舌だね」
涼介「ゆーりぃ、俺は侑李がいちばん大好きで大事だよ」
「ね？」と強く抱き締めてから、体を離そうとしたけれど、侑李は、俺の背中の辺りの服をギュッと握っていた。
何かあったのかな……？
侑李「……一人にしないでよ」
涼介「ごめん。でも、侑李は一人じゃないよ？」
侑李「ううん。一人だもん」
侑李は俺の胸にピタッと顔をくっつけてくる。
涼介「俺たちがいる。だからそんなこと言わないでよ」
有岡先生「そうだよ。侑李には、応援してくれる人がたくさんいるだろ？」
侑李「……学校じゃ……一人、なの……」
涼介「海くんは？」
侑李「お休みだった……」
あぁ、それで、僕は一人だとか言い出したのか。
侑李はもともと人見知りが激しいから、海くん意外の子達に話しかけるのは難しかったのだろう。
学校が終わり、助けを求めるようにここに来て、それなのに、俺は病室にいなくて……。
涼介「ごめん」
侑李「早く退院して、学校一緒に行こ」
涼介「うん。もうちょっと時間かかるけど待っててな」
侑李「ずっと待ってるから」
――――ずっと待ってるから。
すごく良い言葉だと思う。
それだけで安心できて、頑張ろうって思えて。
絶対に追い付いてやるって、やる気を引き出してくれる。
涼介「侑李。俺は絶対、お前に追い付いて、いつかは抜かしてやるからな」
そして、お前に全部背負わせてしまったプレッシャーを、俺が半分背負うから。
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作者名：J | 作成日時：2020年9月29日 14時
