JUMPの闘病生活。 (ページ1)

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僕たちの日常ページ1

侑李サイド

僕たちの病気に奇跡はない。

そんなことはわかっていた。はずだった。

夏の強い日差しとせみの声で目が覚めた。

隣のベッドでまだ寝ている僕の相棒に、小さな声で「おはよう」と言う。

この寝顔を、あと何度見られるのだろうか――――

双子の兄である涼介は、僕の最高の相棒だった。

最高の相棒であり、共に戦う戦友でもあった。

慢性骨髄性白血病(まんせいこつずいせいはっけつびょう)。CML。

それが僕たちの病名だった。

急性の白血病に比べたら、致死率は低い。

でも、移植を受けられないまま移行期、急性転化期になると、致死率は高くなる。

今はまだ、僕も涼介も慢性期だから進行は遅いけど……。

僕たちは移植の相手が見つかっていない。

両親は僕たちを捨て、今は僕たちの知らないどこかで暮らしている。

肉親からの移植が受けられない僕たちは、移植を受けられる可能性が極めて低くなった。

病院の先生たちもいろいろな検査をしてくれたけど、型が一致しなかった。

つまり、今の僕たちは移植の決定を待つことしか出来ないのだ。

涼介「ゆ……ぅ、り？」

外を眺めてボーッとしていたら、いつの間にか涼介も起きたらしい。

目をこすって寝ぼけている涼介に「おはよう」と言うと、「おはよー」と少し眠そうな声が返ってきた。

涼介「ゆうりぃー。今日もすきぃー」

侑李「僕も。明日も好きだよ」

〝今日も好き〟〝明日も好きだよ〟

それは僕たちの暗号のようなものだった。

それを毎日繰り返すことで、今日も明日も必死に生きようと思えるから。

相棒の存在を確かめるように、この暗号を唱える。

涼介だって、必死に生きてるんだ。

だから僕も、必死に生きるんだ。

涼介よりも先には死なない。

涼介の悲しむ顔は見たくないから。

涼介がいるから、辛い治療も頑張れる。

侑李「ありがとー、涼介」

僕がそう言うと、涼介は「何が？」と首をかしげた。

僕は「いろいろ」と答えてから、窓の外の景色を眺めた。

近くの木に１匹のセミがとまっていた。

侑李「ねぇ、涼介。セミがいるよ」

涼介は僕のとなりにやって来て外を覗く。

涼介「ほんとだ。なにゼミかな」

「ミンミンゼミじゃない？」とか「ツクツクボーシ？」とか当てずっぽうで言っていると、そのセミは遠くに飛んでいってしまった。

今日もまた、僕たちの日常が幕を開けた。