秘密の話(?) ページ5
有岡先生サイド
何を話せばいいんだ?
伊野ちゃんとはずーっと一緒だったから秘密なんていくらでも知ってるけど、それは言わない方がいいか……。
涼介と侑李が目を輝かせながらこっちを見てくる。
なんて目してんだよ。そんなキラキラした目、久しぶりに見たぞ。
有岡先生「あのさ、もうちょっと絞ってくれない? こう、具体的にさ……」
涼介「じゃあさ、有岡先生はなんで医者じゃなくて、院内学級の先生になったの?」
涼介が助け船を出してくれたから、それには答えますか……。
侑李はすごくつまらなさそうに口を尖らせてるけど。
有岡先生「先生ね、ほんとは医者になりたかったんだよ」
涼介「あっ……ごめん、なさい。聞いちゃダメだった、かな。話さなくても、い……」
有岡先生「ううん、聞いてもいい話だよ」
俺は、涼介の言葉にわざとかぶせてそう言った。
有岡先生「お父さんが、医者だったんだ。だから、家には大量の医学書があった。先生は、子供のころから絵本がわりに医学書を呼んでたんだよ。だから、周りの人よりは医学の知識を持っていた。」
二人は真剣な眼差しでこの話を聞いてくれていた。
有岡先生「それでね、1回、医者になったんだよ。伊野ちゃん、伊野尾先生たちと同じ時期に、研修医としてこの病院で働いていた。でも小児科で研修していた時期にね、仲の良かった7歳の男の子が、死んじゃったんだ。先生ね、自分より若い人が死んでいくのを、受け入れられなかったの。」
二人はゴクンッと唾を飲んだ。
有岡先生「ショックだった。知識はたくさんあっても、自分より若い人が死ぬという経験はなかった。それでね、先生は小児科に行けなくなっちゃったんだ。怖くてね。そんな自分自身に絶望したから、医者を諦めたんだ。伊野ちゃんは、死をちゃんと受け入れて、乗り越えた。でもせんせ……俺にはね、その強さがなかったんだ。死を見る覚悟が、医者として生きていく覚悟が、足りなかったんだよ。」
途中から、こんな俺を「先生」と言っていいのか、わからなくなった。
それくらい、俺は弱かったんだ。
有岡先生「でもね、諦めきれない自分もいた。だからね、研修の時に知ったこの仕事をしてるんだ。意外と、医者より、向いてたかな」
だから、後悔はしていない。
涼介「有岡先生、この仕事の方が向いてると思うよ」
侑李「僕もそう思うよ」
有岡先生「ありがと」
ほんとに、後悔はしていないんだ。
この仕事を、誇りに思うよ。
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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時