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母親の記憶(ここな様 リクエストです) ページ21

涼介サイド

ふとしたことをきっかけに、母さんの映像が再生される。

それは、今網膜に写っている映像よりもリアルに感じられた。

侑李に「涼介?」と呼ばれて、現実の世界に引き戻される。

涼介「大丈夫だよ、なんでもないから」

ほんとは大丈夫じゃないし、なんでもなくもない。問題大有りだ。けど、それを侑李に言ったら、もっと問題がある。

―――――――ガラガラガラ

ドアの開く音を聞いて振り向くと、有岡先生がいた。

涼介「有岡先生、ノックしなよ」

いつも先生たちが俺らに言ってくることを言い返した。

有岡先生「いや、廊下を歩いていたらさ、いいにおいがしたんだよ。なんか、お菓子のにおいがさ。だから、ちょっと……」

侑李「ちょっと、なに?」

有岡先生「来ちゃいました」

なんで来るんだよ。

心の中でそう呟いた。

一応、裕翔に紹介しとくか。

涼介「この嗅覚がエグい先生、院内学級の有岡大貴っていう先生ね」

ざっくりと説明をした。ざっくりすぎたか……?

裕翔と先生は、俺たちのことを忘れたかのように2人きりの世界に入り込んでる。

ふぅ、と息をついて遠くを見つめた。

もう、何もかもがわからなかった。

侑李は、大丈夫なのかな。なにも知らないでいてほしいな。

ボーッとしていると急に視界に有岡先生が飛び込んでくる。

思わず「わあっ」と声をあげてしまった。

有岡先生「なんか、涼介、変だよ? 大丈夫? どうかした?」

涼介「大丈夫」

有岡先生「ほんとか? 嘘つくなよ」

有岡先生は俺の腕を掴んでくる。

涼介「やめて!」

有岡先生が、俺を叩いていた母さんの姿と重なってしまった。

俺は、有岡先生を振り払う。

有岡先生は油断していたからなのか、弱い俺の力でも大きく後ろに倒れた。

先生はそのまま、壁に背中と腰の辺りをぶつけていた。

壁と骨が当たるような、変な音がした。

有岡先生「いっ……てぇ……」

侑李「大ちゃんせんせ!」

病室の雰囲気が悪くなったのが伝わってくる。

涼介「先生、ごめん……ちょっと、トイレっ……!」

その空気に耐えきれず、逃げ出す。

ごめん、裕翔。

ごめん、有岡先生。

ごめん、侑李。

侑李。俺は、お前を守ってやれない。

それに――――――――――

お前を信じることさえも、俺はできないよ。

頭では、ちゃんと理解している。

みんなは、俺の味方でいてくれるって。

みんなのことは、信じていいんだって。

でも、ごめんなさい。

もう、誰も信じられないんだ。

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作者名:J | 作成日時:2020年3月15日 20時

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