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「如何でしたか……?」
回答を終えた私は閣下をじっと見つめていた。
私の悪い癖で何かに熱中すると周りが全く見えなくなってしまうのだが、今日は気がついたら歩き回っていたということはなかったようだ。私はきちんと席に座ったままだった。
未だに回答の熱が抜けないでいたからか、緊張状態にはあったものの気分は晴れやかだった。
私の声の響きが消えると、この空間を風に靡く草花の音だけが支配する。
誰も何も仰らないことに心配を感じ見回す――
――というところで、突然に閣下が拍手をされた。
すぐに続いてエーミール様と書記長様、そしてトルコ帽の方が拍手をすると、釣られたように全員が拍手をした。
これはもしかして、賞賛されているということなのだろうか……?
もしもそうだとするなば、この方々に賞賛されることほど光栄で名誉なことはない。
しかしそんなことがあっていいのだろうか。
私ごときにこの方々が賞賛を寄せるなど、そんな御伽噺のような可笑しな話があっていいのか。
そんな心配を保健室に置き去りにはできず、ずりずりと引きずったままでいた。
そんな中、拍手が止む。そして閣下が口を開く。
「いやぁ、素晴らしかったゾ。やはり俺が見込んだだけのことはあるな」
閣下は笑みをこぼしながら仰る。
「俺としてはもはや結果は決まっているようなものだと思うのだが、皆はどう思っているか?」
「私もそう思っております、閣下。
この齢にしてこの思考、私としては彼女から学ぶことが多そうで楽しみです」
閣下の問いかけに対してエーミール様が真っ先にそう発言された。
……これは本当に、皆様に賞賛されているのだ。
なんと光栄なことだろうか。喜びを越して照れすらも湧いてくる。
閣下は皆様がエーミール様の発言に頷いているのを認識すると、再度こちらを見て仰る。
「では、審議の結果発表と行こう」
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暁の園(暁夢路)(プロフ) - みしろさん» い、今通知を見てビビり散らしております……か、感謝の極みであります……!! 読みやすいと言っていただけて安心しました、如何せん小生文体が堅くなってしまった人間でしたので(-_-;) コメントありがとうございます、頑張ります!! (2019年11月2日 7時) (レス) id: 2136db8e08 (このIDを非表示/違反報告)
みしろ - 回答パートも嫌味がなくて納得できるし、こんな考え方もあるんだ…!と素直に感心しました…これからも体調にお気を付けて頑張って下さい…!勝手ながら影からひっそり応援させていただきます (2019年11月2日 7時) (レス) id: 950f4c5674 (このIDを非表示/違反報告)
みしろ - 圧倒的な語彙力を感じました…とても読みやすくて頭にすんなり入ってくるので時間を忘れて熟読できました…! (2019年11月2日 7時) (レス) id: 950f4c5674 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁の園 | 作成日時:2019年5月14日 20時