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59・決別。 ページ9

銀時の言葉にAは何も言うことができなかった。


黙っていると銀時の方から話しかけてきた。



「殺したいって思わねぇの?」



銀時は顔を上げずに呟いた。



「憎くねぇの?」


「………わからない」



やっとの思いで口にした言葉は、思いつめている銀時に対してあまりにも冷酷な言葉だったかもしれない。


銀時の冷たい視線が痛いが、空を見上げて言った。



「……わからないのよ」


「………何が、」


「何を思えばいいのよ」



自分でもわかるくらい銀時と母に対する侮辱したような言葉。



「産まれてから一度も愛情を受けたことがないの。産まれてから一度も母の顔を見たことがないの。その人を殺したって言われても、何も思うことなんて出来ないわ」



でもそれは、変えようのない事実だった。


銀時は母と私を知っているからいいけれど私は母のことを何も知らない。


Aの言葉に銀時は少しして墓を見つめた。



「でも、ここに花を供えてたのは、お前なんだろ」


「………」


「……何を思って今までここに来てたんだよ……」



銀時の声が怒っているように思えた。



「……何を思って…こいつに会いに来てたんだよ…っ!」



銀時は、母の気持ちを汲んだ上でAにそう言った。


Aは静かにしゃがみ手を合わせた。



「……何も知らない。何も言えない。けど一つだけ……。私は、この人を信じていた」



Aは言葉を続ける。



「この人だけは私の味方だって…信じてた」



銀時はAを見て唇を噛む。



「……こいつは、お前を心から愛していた」



そう言ってしゃがみ込みAの手を握る。



「こいつからの伝言」



Aが振り向くと同時に銀時は言った。



「笑顔でいますか。元気に生きていますか」



静かに涙を流していたAだったが、銀時の言葉に一瞬目を見開いた。



「……素敵な恋を、していますか」



すぐに銀時が何を言いたいのかわかった。



「幸せな家庭を……築けていますか」



最後とでもいうように銀時は強くAを抱きしめる。


ーーー素敵な恋をしてほしい。


その母の気持ちを私はずっと裏切っていた。


弱さ故に逃げていた。


でもこうなった以上仕方のないことなのかもしれない。



「…………全部、」



銀時の声が耳元で聞こえる。



「全部………なかったことにしよう」



その言葉にAは涙を流したまま頷いた。



「……そう…ね」

60・別れはいつも虚しく。→←58・記憶の片隅にある。



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 土方さんは本当に優しい   
作品ジャンル:恋愛
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けんそう(プロフ) - この作品が大好きです!銀さんの気持ちも主人公の気持ちの揺れ動きようも細かく書かれていて、読んでいていつもドキドキしてしまいます!これからのお話が楽しみで仕方ないです。頑張ってください! (2018年4月3日 19時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
坂田時雨 - さきたたたたた。さん» 更新が遅くなってしまい本当に申し訳ありません!!!書き溜めてますので早急に更新されていただきます…!そう言っていただけて嬉しい限りです…( ;∀;) (2017年8月12日 20時) (レス) id: 82ecc738cc (このIDを非表示/違反報告)
さきたたたたた。(プロフ) - 更新お待ちしていました!!!通知でみたときに本当に嬉しくてガッツポーズしてしまいました…!!時雨サマが書くさらば真選組篇たのしみにしています!! (2017年6月8日 10時) (レス) id: 5998652ea1 (このIDを非表示/違反報告)
- 最新楽しみに待ってます!今まで読んできた小説の中で1番心にきました! (2016年8月10日 12時) (レス) id: 128b60acfe (このIDを非表示/違反報告)
さきたたたたた。(プロフ) - 更新楽しみにしていました!私が読んでいる銀魂の作品ではいちばん好きです!これからも更新頑張ってください!心から応援しています!! (2016年6月23日 22時) (レス) id: 5998652ea1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:坂田時雨 | 作成日時:2016年3月12日 21時

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