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56・伝えられない。―過去編最終話ー ページ6

そこに、銀時の姿はなかった。


それに気づくと同時に、旦那の腰に差されていた刀が抜刀される。


その刀は、押さえつける旦那の背中を斬りつけた。


旦那が倒れ込み、意識はあるようだが立ち上がれなくなる。



「はぁ……っ…」



もうどうせ、あの子には会えない。


もう生きている意味もない。


その思いから、薬も飲まず、死ぬ思いでやってきた。


今まさに、それが叶う。


持病の病気で死ぬことになる。


でも、と彼女は旦那の方に近づく銀時を見つめた。


―――どうせ死ぬのなら、…―――


銀時の刀に手を伸ばす。


刀を握る銀時の手と刀の刃を強く握り、自分の胸に突き刺した。



生々しい音が、後ろから聞こえてきた。


銀時は恐る恐る振り返った。



「…………な…っ…」



自分の持つ刀が、彼女の胸の深々と貫いていた。


刀を引き抜き、慌てて彼女を支える。



「おいっ……!何してんだよお前…ッ!」



息が浅い彼女を壁に寄りかからせ、応急処置をしようと包帯を手に取った。



「……い…いの…」



その銀時の手を弱々しく掴み、彼女は血を吐いた。



「これで……ッ…楽、に…な…」


「お前が死んでどうすんだよ……自分の子に会わなくていいのかよ…!」



誰よりもその子を愛す母親がいなくなったら、その子はどうすればいいのだろうか。


彼女が子を愛すように、こんなに優しい母親を愛さない子はいないだろう。



「お前が腹痛めて産んだ子だろうがッ…!!勝手に置いて死ぬんじゃねェッ!!」



銀時の言葉に、彼女は涙を流した。


きっと、本当は生きたかったのだろう。


我が子と共に、普通の幸せを手に。



「ぎん…と…き、さん……」



弱々しく腕を回し、銀時に抱きつく。


そして、耳元で呟いた。



「…ありが…とう………―――」



―――いつか伝えてあげてください。



その思いを、銀時は受け止めた。



気がつくと、数十分が経っていた。



倒れる男、自分の目の前で息絶えた女性。


銀時は目に焼き付けた。



いつか、この母親の愛を、



どこかで幸せに生きる子へ、伝えるために。




それから数年後、万事屋に依頼がきた。


結月Aという少女からの、依頼だった。


依頼内容には正直耳を疑ったが、とても断ってはいけない気がした。


それだけ弱っている子が、彼女の子なのだろうか。


初めこそ戸惑いはしたが、すぐに確信した。


この子は、彼女の子だと。

57・今こそ、復讐劇を。→←55・出逢えてよかった。―過去編2―



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 土方さんは本当に優しい   
作品ジャンル:恋愛
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けんそう(プロフ) - この作品が大好きです!銀さんの気持ちも主人公の気持ちの揺れ動きようも細かく書かれていて、読んでいていつもドキドキしてしまいます!これからのお話が楽しみで仕方ないです。頑張ってください! (2018年4月3日 19時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
坂田時雨 - さきたたたたた。さん» 更新が遅くなってしまい本当に申し訳ありません!!!書き溜めてますので早急に更新されていただきます…!そう言っていただけて嬉しい限りです…( ;∀;) (2017年8月12日 20時) (レス) id: 82ecc738cc (このIDを非表示/違反報告)
さきたたたたた。(プロフ) - 更新お待ちしていました!!!通知でみたときに本当に嬉しくてガッツポーズしてしまいました…!!時雨サマが書くさらば真選組篇たのしみにしています!! (2017年6月8日 10時) (レス) id: 5998652ea1 (このIDを非表示/違反報告)
- 最新楽しみに待ってます!今まで読んできた小説の中で1番心にきました! (2016年8月10日 12時) (レス) id: 128b60acfe (このIDを非表示/違反報告)
さきたたたたた。(プロフ) - 更新楽しみにしていました!私が読んでいる銀魂の作品ではいちばん好きです!これからも更新頑張ってください!心から応援しています!! (2016年6月23日 22時) (レス) id: 5998652ea1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:坂田時雨 | 作成日時:2016年3月12日 21時

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