88・~14~願い事 ページ38
「願い事……あ!」
願い事を迷う近藤を見て、Aは微笑む。
―――可愛いな……。
「これからもみんな怪我なく過ごせますように!」
それは早口で三回言うと、少し間を開けて銀時が言った。
「お妙に絡んだこと言うかと思ってた」
「そりゃもう願わず行動に移してるから!やっぱ、戦場でも怪我なく無事帰ってこられるよう願っとかないとな!」
近藤を言葉に、Aも驚いて聞いていた。
お妙さんのこと言うと思っていたから、それこそその言葉には感動する。
「トシ、お前は何願ったんだ?」
「……こいつのこれからの人生が上手くいくようにって」
Aは土方を見つめ、気まずそうに目を逸らした。
―――土方さんと一緒に入るのは2回目だな……あんまり優しくされると…一回目のこと思い出してしまう……。
家から逃げ出した記憶。
優しさを知った記憶。
幸せを願った記憶。
それは全部、真選組のみんながくれたもの。
失いたくない、大切な……。
Aが暗い表情で俯いていると、近藤が話しかけてきた。
「結月は何を願ったんだ?」
「……私は…、」
大切な、家族との思い出。
「……今の生活がずっと続けばいいな…って」
そう言った時、ずっと繋いでいた銀時の手が離れた。
違和感を感じて、銀時の方を見る。
「……銀時は何を願ったの?」
手が離れたことに対して若干寂しく思ったが、そう聞いてみた。
銀時を見つめていると、銀時が小声で呟いた。
「……お前の恋が叶うように…って……」
その言葉に、Aは目を見開いた。
さっきまでずっと、銀時のことしか考えていなかったから、
その言葉はものすごく距離感を感じさせるものだった。
Aが寂しそうな目で見ていると、土方が言った。
「そろそろ出ようぜ」
「そうだな……お前らも出る?」
「……あぁ。もういいよな」
銀時はAの目を見ずにそう言い、温泉の端まで移動した。
「おら、俺ら先に出んぞ」
近藤と土方に言い、Aに軽く手を振った。
口パクで『あとでな』と言い、全員中に戻ってしまった。
Aは、一人で夜桜を眺めながら湯船から上がる。
「……」
―――……銀時に恋が叶うことを願われて、何でこんな息苦しいんだろう。
頬に雫が伝った気がする。
「……早く出よう…」
静かに呟いて、自分も中に戻った。
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けんそう(プロフ) - この作品が大好きです!銀さんの気持ちも主人公の気持ちの揺れ動きようも細かく書かれていて、読んでいていつもドキドキしてしまいます!これからのお話が楽しみで仕方ないです。頑張ってください! (2018年4月3日 19時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
坂田時雨 - さきたたたたた。さん» 更新が遅くなってしまい本当に申し訳ありません!!!書き溜めてますので早急に更新されていただきます…!そう言っていただけて嬉しい限りです…( ;∀;) (2017年8月12日 20時) (レス) id: 82ecc738cc (このIDを非表示/違反報告)
さきたたたたた。(プロフ) - 更新お待ちしていました!!!通知でみたときに本当に嬉しくてガッツポーズしてしまいました…!!時雨サマが書くさらば真選組篇たのしみにしています!! (2017年6月8日 10時) (レス) id: 5998652ea1 (このIDを非表示/違反報告)
新 - 最新楽しみに待ってます!今まで読んできた小説の中で1番心にきました! (2016年8月10日 12時) (レス) id: 128b60acfe (このIDを非表示/違反報告)
さきたたたたた。(プロフ) - 更新楽しみにしていました!私が読んでいる銀魂の作品ではいちばん好きです!これからも更新頑張ってください!心から応援しています!! (2016年6月23日 22時) (レス) id: 5998652ea1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:坂田時雨 | 作成日時:2016年3月12日 21時