84・~10~温泉 ページ34
こんなこと、今言うつもりはなかった。
でも、確かに考えてみたら。
万事屋が、坂田銀時という男でよかったと安心した。
それ以外のことは考えられないし、考えたくもない。
銀時でよかったと、思ったのだ。
「…そう、か…そう言ってくれんなら…俺も罪悪感感じなくて済む…」
銀時はそう言って言葉を切った。
時計を見ると夕方の5時を回っている。
「…そろそろ、温泉行くか」
気まずい沈黙に堪え兼ね、そう言って立ち上がる。
「最近日が落ちるの早いし、丁度いい暗さなんじゃね?」
「…そう、だね」
Aは戸惑ったように目を伏せる。
「ごめんね、さっきから」
「いやいいって。結果的に…お互い、嫌な気持ちでああいう行為をしてなかっただけでも、良かったんじゃねぇの?」
銀時は頭を掻いて、そう呟いた。
そんな会話をして歩き、男湯と女湯の分かれ道で立ち止まる。
「何分くらい入る?」
「私は…30分くらいかな」
「じゃあ…髪乾かす時間もあるだろうし……一時間後、またここで」
そう言って別々に移動する。
Aが脱衣所に行くと、他の客はいないようだった。
大体みんな、夕食後に入るからだろう。
ーーー…貸し切りか。
帯を解きながら、土方との会話を思い出す。
ーーー…のんびり入れそうだな……。
疲れも取れるだろうし、やっぱり来てよかったな。
そう思いながらシャワーを浴びる。
頭と体を洗い、中の温泉に浸かる。
「ふぁー…あったまる……」
気の抜けた声を出し、広々とした温泉を楽しむ。
10分ほど浸かった後、温泉から上がる。
「気持ちいいなぁ…」
そう呟いて、ガラス越しに露天風呂を見る。
「もう露天風呂入ろうかな…」
そう思って外に出るための戸に手をかけると、そこには注意書きが書いてあった。
『当館の露天風呂は現在、混浴となっております。』
ものすごく迷う。
この時間帯だし、他の客はいないだろうけど…。
大体、露天風呂が混浴って如何なものだろう。
今なら貸し切りで楽しめると思ったのに。
ーーー……でも、来るとしたら銀時だよね……。
でも、銀時だって同じことで迷ってるはず。
それで、諦めてくれるはず。
「……大体、もう私たち他人だから…大丈夫」
銀時が来ないことを信じ、そう呟いて戸を開けた。
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けんそう(プロフ) - この作品が大好きです!銀さんの気持ちも主人公の気持ちの揺れ動きようも細かく書かれていて、読んでいていつもドキドキしてしまいます!これからのお話が楽しみで仕方ないです。頑張ってください! (2018年4月3日 19時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
坂田時雨 - さきたたたたた。さん» 更新が遅くなってしまい本当に申し訳ありません!!!書き溜めてますので早急に更新されていただきます…!そう言っていただけて嬉しい限りです…( ;∀;) (2017年8月12日 20時) (レス) id: 82ecc738cc (このIDを非表示/違反報告)
さきたたたたた。(プロフ) - 更新お待ちしていました!!!通知でみたときに本当に嬉しくてガッツポーズしてしまいました…!!時雨サマが書くさらば真選組篇たのしみにしています!! (2017年6月8日 10時) (レス) id: 5998652ea1 (このIDを非表示/違反報告)
新 - 最新楽しみに待ってます!今まで読んできた小説の中で1番心にきました! (2016年8月10日 12時) (レス) id: 128b60acfe (このIDを非表示/違反報告)
さきたたたたた。(プロフ) - 更新楽しみにしていました!私が読んでいる銀魂の作品ではいちばん好きです!これからも更新頑張ってください!心から応援しています!! (2016年6月23日 22時) (レス) id: 5998652ea1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:坂田時雨 | 作成日時:2016年3月12日 21時