アカシャ・クイール (ページ11)

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私には、妹がいた。まぁ、過去形な。でもきっとどこかで生きているはずだ。
…妹は、瞳は同じく赤いけれど、私とは真反対で、すごく女の子らしくて、綺麗…というか、可愛い感じだった。騎士の訓練は似合わなかったな。そもそもあまり訓練していなかった。例外って言うのはあれなんだろうな。
名前はラシェルと言って、皆にあだ名で呼ばれていた。

過去形なのは、父さん達が抑えられなかった盗賊達が、さらっていったからだな。私も剣を振るったけれど、到底力が及ばなかった。今だったら普通に勝つ。

ラシェルは可愛いから、高く売れるんだろうな。父は討ち死に、妹は泣き叫んで連れて行かれて…地獄絵図って言うのは、あんな感じなのかな。血肉が散乱して、鉄錆びの匂いに満ちていて。あ、食事中にする話じゃないね。すまない。

私は必死に盗賊の後を追ったよ。生き残った仲間と一緒に。妹のことは大好きだったから。
でも、あの頃の体力なんてたかが知れてる。
結局、意識が飛んで、目を覚ました時には妹は居なかった。悲しかった。
でも泣かないように仕込まれていた。
悔しさの方があったかな。騎士になるくせに、妹すらも守れなくて。

途中で意識を失うなんてもっての他だった。
討ち死にした父の方がよっぽど格好がいいよ。
起こったことは変えられないから、必ずあの盗賊を討つと誓って、訓練に明け暮れた。

この前、その盗賊を討ったんだけど、

「あいつの居場所は知らない。当時の長がもういないから。」

だってさ。
この世で一番惨い殺し方を考えたね。
だって、家族を二人も奪っていった。仲間も、たくさん。
そいつは普通に首を落としただけなんだが、恨みは深いよ。一生恨んでやろう。

そいつを討ち取ったことで、私が故郷に固執する理由は無くなったから、逃げてきたんだ。労働環境も酷かったしね。クイールは大抵どこでも居るし、重宝されるんだけど、私はそうじゃなかったな。なぜだろうか。

……今となっては関係ない話だが。今までをざっくり聞かせると、こんな感じだな。幼少期じゃないところが多かったけど。

ルキ「なかなかに惨いじゃないか…」

ルキアが目を見開いて私をまじまじと見つめている。

アカ「そうだな。あの頃の記憶ははっきり残ってる。」

ルキ「…そういえば、昔あたしのいた領地に可愛い女の子が売られてきたな。ふわふわした巻き毛で、確か瞳も赤かった。」

…は？瞳が赤いのは、クイールの人間だ。