恋とは詰まる所病気です ページ8
昔々のその昔。私達が生きる国が「大日本帝国」だった頃。一人の作家が一人で生きておりました。
その作家は孤独でした。それもその筈、まだ当時の小説家というものは地位が低く、嫁も恋人もいない……等、よくある事だったのです。
その一人の作家は、三人の友人と時々文を交わしながらも、孤独の大きな手に抱えられて、不思議な安らぎと少しの後悔の中、生きていました。
ある時小説家は、活動写真を見に行きました。
活動写真はまだまだ出たばっかりで、世間様の目は新しい玩具に首ったけになっていましたが、それとは逆に、活動写真の演者の事は下に見ていました。
小説家は、もしかしたら、と思ったのです。
同じ境遇の人であるならば、今の孤独も癒えるのではないかと。
でも、小説家の手は震えていました。「今」を変えるのが怖かったのです。
小説家は活動写真の小さな切符を買いました。
銀幕には一人の男が写っていました。熟練した体術で、颯爽と敵を打ちのめす。でもどこか感情的な所もあり、お茶目でユーモアもあった。
……小説家は首ったけになりました。
嗚呼、嗚呼、嗚呼!なんて夢心地なのだろう。これが恋、これが激情!
演じられた、架空の人。それでも構わないと小説家は思いました。一目だけ会いたいと思いました。
小説家は出不精だったのですが、その日からあちこちを駆け回りました。映画のロケ地に、映画の製作所に、監督の元に、事務所の元に。
そしてある日、小説家は、ついに出会いました。
銀幕の彼方にいた愛しい人――――Aに
・
「なーんて、ね」
男はそう呟いて
今まで書いていた物語を、消した。
終わり ログインすれば
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垢捨て(プロフ) - 鈴木さん» わ〜!ありがとうございます!更新頑張ります!鈴木さんのナ男主も見てみたかった…(´・ω・`) (2019年6月18日 23時) (レス) id: bb4b2dae73 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木(プロフ) - 男主大好きなので嬉しいです……!自分もnplで男主書いていた身としては、通わせていただきます…! (2019年6月18日 7時) (レス) id: 98b84fdfd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:垢捨て | 作成日時:2019年6月8日 2時