恋愛ゲームの悪役に転生。だが男だ Ⅲ【男主】 (ページ12)

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やばいと思った時には遅かった。隣に座っていた彼が魔法陣を俺の目の前に描く。直後、仄かな葡萄の香り。

口の中で甘い味が。頭の中ではモヤをかけてくるような暖かさが回りだす。
以前もかけられた魔法、まさか今やりやがるなんて。

ra「緑くんが言ってた通りだぁ…！A、今弱ってるんだね」
「分かってんなら、やめろ…！」

担任を引き剥がそうとすると、手枷をはめられた。
俺がアンから教えてもらうまで知らなかった魔法…カルト集団のトップは習得済みとでも言うのか。

ミドリの方を見るとアイツは気まずそうに目を逸らす。
どうやら助け船なんてものはなさそう。

ra「…ふふ、今回も頑張るなぁ。かわいー」

当たり前だと反論しようとして口を開いた瞬間、指が入り込んできた。まるでおもちゃで遊ぶ子供のように。彼は容赦なく舌を引っ張り、口の中をぐるぐるとかき混ぜてくる。

気持ち悪さに睨み付けるが、彼の表情は恍惚としていて瞳が濁水に覆われてしまったように濁っている。

(くっそ…)

こんなことをされていながらも瞳に吸い込まれそうになるのは魔法のせいか。いったい俺に何をしたいのだろう。このキャラクターの考える意図はつくづくわからない。

(ていうか誰だよこの魔法考えたやつ)

闇属性ってやっぱ犯罪臭強いものばかりなのだろうか。

ra「……ミドリー？」

指地獄から解放されて、薄くなっていた空気をめい一杯に取り込む。

md「ﾅ､ﾅﾆ」
ra「教えてくれたご褒美。おいで」

彼の一言でふらりと動きだすミドリ。
いままで反応が全くなかった伝達魔法で一言だけテレパシーを残して。

md『ごめんねAさん。後で怒ってもいいから、今だけは許してね』

近づいてきた彼の瞳には青色のハートが映っていた。