・〜1day finish〜 ページ40
チーノは人が居るところを避けて俺を抱え移動する。
別に足は平気なのだが下ろしてくれる気配がない…。
ci「怪我、痛くないん?」
「見れば分かりませんか」
せめて痛みは取って良かったのではないか、旧式魔法を考案した奴よ。おかげでいま痛みで機嫌良くないよ。
ci「部屋に俺いとく?」
「いや貴方明日も忙しいでしょう。…というか人の声大きくなってきてるのですが」
ci「お前食堂近くに予定あるやん」
確かに、エーミールとの食事の約束をしていたが…。
「バレるのですが」
ci「もうエミさんは気づいてた。だから俺が使いっ走りになっとるやん」
「そのあとは?」
ci「運んだら退散する」
「…本当は?」
どことなく刺々しい言い方をしている彼。本心はまた別な気がした。
ci「明日はまだ空いとるやろ?」
「へ?」
まさかの言葉に目をパチクリと動かす。てっきり警戒されてて何も起こすんじゃないぞと言われるかと思っていた。
「……嫌いだったのでは?」
ci「俺は嘘つき道化師なんやろ?なら察してや」
ふむ、前世であった嫌いは好きな裏返しというヤツか。なんともわかりにくい友情表現であるものの、関係性が『良』に傾いているならそれはいい事だろう。
「ピーマンと瓜類は避けていただけると。あとデザート多めでお願いしますね。あ、ドリンクは…」
ci「うわぁ、注文多い」
瞳は相変わらず眼鏡で見えないが、口元は弧を描いていた。
ーーー
エーミールへと引き渡された俺。かなりショッキングだったらしく、両腕を見た途端に元より白い肌がさらに青さを増やしていた。
そんな彼は変装を見破った時のように推理でもしてくれたのか、元気がない時でも食べやすいゼリーを持ってきてくれた。
なんて優しい上級生。が、しかし。
em「は、はい、Aさん」
ゼリーを乗せたスプーンをこちらに向けるエーミール。
しかしその手はプルプルと震えている。顔も強張っているし。
これには俺も笑ってしまった。最初の私が食べさせますね!と意気込んでいた威勢はどこへやら。
em「こういうの慣れてないんですよ!」
「まぁ貴族ですし看病は慣れてないですよね。仕方ないです」
em「そこじゃなくてですね…」
困惑している隙にスプーンに乗ったゼリーを食べる。
これはチェリーの味か。前世では食べたことなかったが、なかなかにいける。
(他は何味を食べようかな)
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作者名：あんべべ | 作成日時：2021年9月26日 19時
