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Story5 ページ8

「少し聞きたいことがあったの。いいかしら?」

「大丈夫です。」

すっかり暗くなってしまった道を歩いて自分の家に向かう。たまたま相田さんも同じ方向のようで別

れるまでの間で話したいことがあるらしい。

「じゃあ聞くわね……キセキの世代の一人の赤司征十郎くんは、赤司さんのお兄さん?」

「はい、そうです。」

いつ聞かれるか身構えてたが意外と遅かったな、この質問。

「双子の兄で、中学卒業までは一緒に暮らしていました。お兄様は今は京都の別邸で暮らしています。」

「別邸……お金持ちの世界ね。赤司さん……美貴ちゃんって呼んでもいい?」

「はい。」

「ありがとう。あともう一つ聞きたいことがあってね、初めて会った時から中々目が合わないなって思ってるんだけど……何かあったの?」

相田さんの口からその質問が出てきた瞬間、私の足が動きを止めた。それに気づいたのか相田さんも

私の少し先で足を止める。気づかれてた。バレてないと思ったのに。また怒られるのだろうか。そん

なの嫌だ。テツヤさんと一緒にスタートラインに立てたのに。

「……すみません。」

その言葉を口にすると、自然と涙が零れてくる。静かに、でも止まることを知らず流れるそれを止め

る術を私は知らない。制服の袖で涙を拭っていたら、相田さんが駆けつけてくる。それから私の背中

をさすってくれた。

「ごめんなさい。謝らなくてもいいの。話せないなら話さなくても大丈夫よ。」

「でも、せっかく良くしてもらってるのに、悪いです。」

「何も悪くないわ。こっちこそ嫌な事を聞いてしまってごめんなさい。ほら、まずは落ち着いて。」

「はい……」

道の脇にある花壇の縁に腰かけて数分。ようやく収まった涙の跡を乾かしつつ、相田さんはまた口を

開く。

「本当にごめんなさい。無神経だったわ。」

「もう大丈夫です。謝らないでください、相田さん。」

「ありがとう。あの、一つだけアドバイスしてもいい?」

「どうぞ。」

「人の目が見れなくても私は許すし、それで構わない人もいる。だけど目が合わなくて不快だと思う人もいるからそういう時は、人の口元を見てみるといいわ。目が合ってなくても相手は合ってると思ってくれるから。」

「そんな裏技が……! ありがとうございます。」

これから参考にしよう。

「じゃあもう遅いし帰りましょうか。」

「はい。では、また明日の部活で。」

相田さんに手を振ってお互い別々の帰路に着く。涙の跡はもう消えていた。

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作者名:ソナタ | 作成日時:2020年9月14日 20時

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