義兄は私を嫌っている。Part2

第5話。 ページ6

「準決勝進出おめでとう」

「お、サンキュ」

夏休みに入ってもう20日が過ぎた。

今までは果てしなく続く孤独な夏休みに耐えてきたが、今は違う。

だって、貴方がいるから。

相変わらず、土日とか彼の試合の時は会えくて苦しいけど…

それでもいい。

会えば貴方がその苦しさも寂しさも孤独も全部吹き飛ばしてくれるから。

「それに勝てばもう決勝戦か。」

その日は日曜日。

絶対にシンお兄ちゃんが家にいる。

「なんだよ、急に来れないとか言うんじゃねぇだろうな？」

私、ちゃんと一歩を踏み出せるのかな？

「ううん、違うの。本当に田ノ浦くんは凄いんだなって…」

お兄ちゃんの隙を見て逃げ出せるかな？

「ばーか、君が彼女なんだぞ？まだまだ足りねぇよ。」

「え？」

「俺さ、ぜってぇ君の兄貴たちに負けねぇくらい有名になるから」

どうして、今…お兄ちゃんの話をするの？

「そんなことしなくていいよ！」

「君がよくても俺が嫌なの。じゃないと、君を彼らから奪えない気がするんだ…」

ねぇ、田ノ浦くん…どうして？

もしかして何か感づいてる？

必死で隠し通してきたはずなのに…

私…どっかでミスをしてしまったの？

「そんなことないよ！お兄ちゃん達は凄く優しいし、きっと田ノ浦くんのことも歓迎してくれるよ！」

ダメだ。

隠し通さなきゃ。

この秘密だけは…

この秘密だけは絶対に。

「そっか…じゃあ、今度挨拶しに行くわ。」

「え？」

「歓迎してくれんだろ？」

「う、うん…」

「早えーほうがいいよな？」

「…田ノ浦くん」

「じゃあ、明後日の花火大会の前とかどうだ？」

「田ノ浦くんっ！」

「手土産、何がいいと思う？」

「田ノ浦くんってば！」

ガンッ

「なんだよ？君の兄貴にちゃんと彼氏として紹介してくれんだろ？」

え…今何が？

気づけば私は机の上に押し倒されていて、田ノ浦の顔が目の前にあって…

「何隠してんだよ！！俺がわからねぇとでも思ってんのかよ？」

ねぇ？

一体、今…何が起こっているの？

どうして、田ノ浦くんは怒っているの？

「全部、話せよ！俺が守るって言ってんだろ！」

私…必死で隠してきたつもりだよ？

なのに、なんでそれがわかるの？

なんでバレたの？

早く言い訳をしないといけないのに、頭が真っ白で何も言葉が出てこない。

「離してっ！」



何をやってるんだろう私…

自分が本当に馬鹿すぎて笑える。



私はこの日、田ノ浦くんを思いっきり突き飛ばして図書室から逃げ出した。

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