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第2話。 ページ25

身体中が痛い。

私が自然に目を覚ました時、兄の姿はとっくになかった。

6時か…

二度寝をするか少し迷う時間だが、私は学校の準備をすることに決めた。



ガチャン…

物音があまりたたない様にして家のドアを閉める。

大体この時間から野球部の朝練が始まるから校門は開いてるはず…

そういえば、お兄ちゃん達の靴…もうなかったな。

ミユキお兄ちゃんは朝練だし、シンお兄ちゃんはほとんど家に帰ってこない。

まぁ、帰ってきても暴力を振るわれるだけだし。

それはそれでありがたい。

そんな事を考えていると、昨日のミユキお兄ちゃんの冷たい目が脳裏に思い浮かんだ。

<俺の周りの奴らに近づくな>

それがお兄ちゃん達の命令だった。

きっと、周りに私の存在を知られたくないんだ。

それを破った私が悪い。

我慢しなきゃ。

全部、私が悪いんだから。

「…っ」

泣くな私。

もう少しの我慢…

もう少しの我慢だから。

自分にそう言い聞かせ、私は図書室へ急いだ。



ガラッ

よかった…誰にも会わなかった。

私は図書室に入るなり、一番奥の窓側の椅子に向かう。

椅子に座り一息つくと、さっきまで我慢していた涙がポロポロと自然に零れ落ちてきた。

大丈夫。

今は我慢しなくていい。

だってこの時間は誰もこないから…




「…え?」

私の口から驚きの言葉出るのは当たり前だった。

だって…

ふと外を見るとグラウンドを仕切るフェンスに寄りかかって図書室を見上げる彼が見えたから。

こんな時間になんで…?

だってまだ7時にもなってないのに…

田ノ浦くんは私と目が合ったのに気づいたのか、気まずそうに少し手を上にあげた。

私はそれに応えることはなく、すぐに彼から目を背けた。

お願い…

今はほっといて…。





ガラッ

私が目を背けて暫く経つと、図書室のドアが開いた。

「おはよ」

少し息が切れてる…

きっと、急いで上がってきたんだ。

「…おはようございます」

私は彼に背を向けたまま、挨拶を返す。

「君は意外と泣き虫なんだね」

「…泣いてません」

「泣いてるじゃん」

「泣いてません!」

「じゃあ、こっち向いて」

「嫌です」

「じゃあ、俺がそっちに行くから」

そう言って彼は私の前に立ち、ゆっくりと私の顔を持ち上げた。

「ほら、やっぱり泣いてんじゃん」

彼はそう言って少し切なそうに笑った。



なんで貴方がそんな顔をするの?


貴方がそんな顔するから…


ほらまた…


涙が止まらなくなるんだよ。

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まなか(プロフ) - はじめまして。すごくおもしろいです、全て読ませていただきましたが話がとても深く、とても感情移入してしまいました。更新等頑張ってください。楽しみにしてます (2021年1月12日 22時) (レス) id: 55942c365e (このIDを非表示/違反報告)
彩波 - 面白いです!!!! もう感動して泣きましたよー!! part 2も頑張ってください! (2019年2月16日 6時) (レス) id: 6f464ca19c (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - 魅月さん» ありがとうございます!!そのコメントに元気をもらいました!! Part2の方もどうぞよろしくお願いします! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - 匿名でいたいさん» うずうずさせてしまってすみません!笑笑 Part2できました^_^ Part2の方でもうずうずさせない程度に頑張りますのでよろしくお願いします! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)
まりあ(プロフ) - ゆうあさん» コメントありがとうございます!夢主が幸せになれるよう最後まで見守ってください^_^これからもコメントお待ちしております! (2018年8月18日 0時) (レス) id: 3c107f3e51 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まりあ | 作成日時:2018年4月20日 4時

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