歌に愛されて。2【伊/東/歌/詞/太/郎】

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スピーカーで話すよう指示され、先生の声が拡大された。



『Aちゃん？…大丈夫、長くは喋らない。君が傷つくのは嫌だから、

…ちゃんとお別れするしか、ないね』




「っ、」



先生、それは本心なの、演技なの？

どうしてそんなに、辛そうに話すの。







「…せんせい…」






うまく出ない声で、かすかに呟く。



彼は一体なんの気か、本当に待ってくれていた。








『…あのね。


今まで、すごく楽しかった。これからも君を生徒として、いっぱい面倒見てあげたかった』







…なんで、そんなこと言うの。


助けるからって、待っててって、言ってくれるんじゃないんですか。







「や、だ……」






涙がふわりと湧いて、溢れていく。





『そんなこと、言わないで。

僕には君が大事なんだ、


大切な生徒(・・)だからこそ、もう僕は葉月さん(・・・・)と、お別れしなくちゃ』


「なんで、だったら…わた、しは、」


『葉月さん、だめ。最後だから、ちゃんと聞きなさい』


「さいご、って、なんで…！先生っ、」









『この前、君に難しい問題を出したよね』






「…なん、ですかそれ、こんなときに…べんきょうって、」





『でも僕、もう採点してる余裕がないから、口頭で答えを聞かなきゃならない』







それを聞いた目の前の彼が吹き出した。



「ええ、なに、お勉強？

A、ねえ、この人に、ほんとに大事にされてたわけ？」





『…葉月さん。答えて』







難しい問題？

私には、覚えがなかった。





先生と離れたくない、それだけなのに_____








『分からなかったの？

僕が、大切な夜に出したでしょう。





____YesかNoしか、選択肢は無かったはずだよ。

葉月さんは頭がいいから、正解を言えると思ったのに』









"返事は本当に、いつでもいいから"






(…！)






「っ、それ、」






『まだ分からない？

…僕は、葉月さん(・・・・)とは、これ以上は居られない。


いつも言ってるでしょう、

僕は絶対に、大切なものを守るって決めてるの。……意味、分かるよね？




早く答えて。時間がない』







「………っ、せんせ、それは、








わたし、


い、Yes、って、思った、………っ、」









『…………うん、正解。




Aちゃん、…大好きだよ』





____その瞬間、がっしゃあん、と派手に粉砕された、目の前の窓ガラス。





視界が、大きく開ける音がした。

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