65*束の間の。 ページ28
「……た、だいま、かえりました…」
「あ、おかえり!」
Aちゃんに声を掛けると、
彼女は玄関先で俯いて、中に入ろうとしなくて。
「…Aちゃん?」
歩み寄ってみたら、僕の歩幅の分だけあとずさりされる。
やがて、
とん、と背中が玄関ドアにくっついて逃げ場がなくなると、
Aちゃんは、かざした両手で顔を隠してしまった。
これは、どうしたんだろう。
「…なにかあった?僕でよければ聞くから、とりあえず中に入らない?」
「………あ、あの…」
"あの、"と言ったきり、Aちゃんが黙り込んでしまったので、
僕は声のトーンを幾らか落として、いつも通り彼女の髪に手を伸ばした。
「…怖くなっちゃった?」
_____しかし、左手が触れる前に、
ぱし、と振り払われてしまって。
(…え、?)
うわ、これやばいやつかな。僕なんかしたっけ_____
「ごめ、ん、あの、昨日のこととか、色々しんどくさせちゃったなら申し訳な…」
「っ、違う!
…ちが、います…、先生、」
彼女が慌てて口を開いたので、僕がそれを聞こうと、耳を寄せたら。
「さっき…、ろんちゃんと、色々話してたら、その」
「うん、」
「…せ、……先生のこと、なんか、すごく、意識してしまって、…!」
「……うん?」
え?なに?なんて言った?
理解の追いつかない僕に、Aちゃんがさらに追い打ちをかける。
「昨日、そ、その、……き、きすとか、したんだなって思ったら、あの、
恥ずかしくて、…せ、んせいの目を、うまく、見られません…」
愛しい彼女は、顔を隠したまま。
______沈黙。
破ったのは、僕の方だった。
「ふっ、
……あっはは、気ぃ抜けた!よかった、悪い話じゃなくて」
「わ、笑わないでくださいっ…!」
「ご、ごめん、でも、可愛くて…あーよかった、ほんとに焦ったよ、もう」
彼女に珍しく怒られて、それもまたおかしくて笑ってしまった。
今朝から思ってたけど、Aちゃん、少しずつ素の感情を出してくれてる気がする。
…僕が影響できているなら、そんなに嬉しいことはないな。
「か、可愛いとか、普通に、言う…」
「っふふ、ねえ、とりあえず中に入ろうって!疲れてるでしょー、ちゃんと休まなくちゃ」
「休め、ないです、先生がいたら…!」
「いや、ここ、僕の家だからね?」
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あきおと(プロフ) - 桜木さん» 急かされてるなんて全然です!たのしみにしてくださるとモチベが上がります爆上げです笑 とりあえず100話完結の予定になったので、本当に100話で終わるか見守っててください笑 (2018年2月22日 15時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
桜木(プロフ) - あきおとさん» わわわ超まで付いてる…めっちゃ嬉しいです;▽;愛を叫ぶ桜木です(あきおとさんの作品の歌詞さんは本当に好みで作品自体もホントに好きなので……。ホワイトデーも楽しみに待ってます!急かしてたらごめんなさい;あきおとさんのペースで書き続けてくれたら嬉しいです! (2018年2月20日 11時) (レス) id: 69ddd43526 (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - 桜木さん» 超覚えました!!いつも愛を叫んでくださるので!!(褒めてます) ホワイトデー早く描きたいなあ…間に合わなかったとしても番外とかで絶対ホワイトデーしますので、その時は是非!笑 (2018年2月20日 1時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
桜木(プロフ) - あきおとさん» わぁぁぁあきおとさん!覚えて頂いて光栄です…!!!( ;∀;)ホワイトデーも楽しみです…!歌詞先生いじわるになっちゃうんですかね〜〜!!今からとっても楽しみにしてます……! (2018年2月19日 7時) (レス) id: 69ddd43526 (このIDを非表示/違反報告)
あきおと(プロフ) - 桜木さん» ぁぁぁぁあ!桜木さん、お久しぶりです!(笑) たぶんホワイトデーは、夢主が超接近戦でからかい倒されます() (2018年2月18日 22時) (レス) id: 591088b3ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきおと | 作成日時:2017年8月19日 13時