歌に愛されて。2【伊/東/歌/詞/太/郎】

63＊friend ページ26

半日で終了した、今日の学校。




明るくて澄んだ彼女の声が、帰ろうとしている私を呼び止めた。






「A！」



「ろ、ろんちゃん…！」






私が答えると、ろんちゃんは可愛らしく笑って。








"ちょっと、ついてきてほしいの！"




そう言って私の手を引き、廊下を一直線に進んでいった。




____職員室に戻りがけの、伊東先生の背中に向かって。






「え…？ろんちゃん…？！」




「歌詞せんせーいっ！」







その声に、振り向いて私たちを見た歌詞先生。




「ん、炉端さんと、…葉月さん？どうかした？」





ろんちゃんは答えずに、

空いている手で伊東先生のことも引っ張って、私たちを廊下の隅っこに誘導。



それから、顔色ひとつ変えずに言い放つ。





「今日、A借りてもいいですか？」



「「っ……？！」」






＊





「…炉端さん？ちょっと、言ってる意味が…あんまり分からないんだけど」





「だーかーら！放課後！彼女さんとの時間を私が奪っちゃうから、お許しをもらいに」





____ろんちゃんは臆せずに、そんなことを。




そして、さらに悪戯っぽい瞳で追い討ちをかける。




「大丈夫ですよ、私がAと仲良しだから勘付いただけ！周りにはぜーんぜん、バレてないはずです」






厳密に言えば、まだ付き合ってはいないのだけど。既にそれに近いのは確かで、



____誤魔化しきれないと判断したらしい先生は、観念したようにろんちゃんと向き合った。




「炉端さん、


…ごめん、その、教師がこんなこと言うの最低だとは思うんだけど…彼女とのことは、どうか、内密に」






「ふふ、最初からそのつもりです！私は、Aの味方ですからね！」




"その代わり、

ガールズトーク、めいっぱい盛り上がらせてもらうので"






ろんちゃんが伊東先生に、ぱちっとウィンクを残して。


私の手を引いて立ち去ろうとしたのだけど、





「あ、葉月さんっ」





先生に呼び止められて立ち止まり、


数歩もどったら、小さな声で耳打ちされた。







「明るいうちに帰ってきて。…先に帰って、待ってるから」




「…はいっ」






そして今度こそ、ろんちゃんと2人で教室に戻る。






「Aも落ち着けそうな場所、見つけといたから、そこに行こ！」



「あの、…ろんちゃんは、なんで…そこまでしてくれるの…？」






…私の疑問には、彼女は可愛らしい笑みで、ひとこと。




「Aは、私の友達だから！」

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