水曜日にはサヨナラを kr⇔nk ページ13
なかむside
※一応忘愛症候群パロ
''人に忘れられた時が本当の死''だと、誰かが言った。
マンガの台詞だっけか。
それともなんかのドラマだっけ。
...なら。
忘れられる事が人間の死だと言うなら、俺は。
『...誰？』
彼奴にとって、俺は。
大好きな人から忘れられた俺は、もう。
＿＿死人も同然だとでも、言うんですか。
なんの変哲もない、普通の日だったと思う。
いつも通りの変わらない、普通の水曜日。
普通に大学に行って、普通に友達と話して。
そんな、いつも通り変わらない、｢普通の日｣で終わる筈だった。
...おかしいなぁ。
なんでだろうなぁ。
｢どう、して、こうなったかなぁ...｣
どうやらもう、心臓は動いていないらしい。
彼にとって俺は、知らない人になったらしい。
眼鏡の奥の、いつも俺を優しく見つめてくれるあの琥珀色は、不思議そうに見てくるだけになったらしい。
...随分曖昧に話すって？
そうでもしなきゃ、この状況を飲み込めなかったんだよ。
何でもない日の筈だった。
何にもない日で終わる筈だった。
＿＿まさか恋人に忘れられるなんて、思いもしないだろう？
｢こんにちは。｣
『だれですか？』
｢君の恋人だよ。｣
『そうなんだ、覚えてない。』
｢あぁ、はい、そうですか｣で済ませられるわけ無いだろう。
むしろ泣かなかった事を褒めて欲しいくらい。
...なぁ、今なら、泣いていい、かなぁ。
｢っ...ふ...ば、か...｣
あぁ、もう、ぶん殴ってやりたい。
1週間の折り返し。また明日も予定があるのに。
明日はきっと目が腫れてる筈だ。
喉も枯れてるかな。
...変なの、風邪でもないくせにさ。
｢っ〜、ばかぁ！！！...っ、きりやんの、ばか、ぁ...っ、｣
今だけは、思う存分泣かせてくれ。
ねぇ、ねぇ、なんでだよ。
覚えてないなんて、どうして。
朝起きたら、｢夢でした！｣なんて展開期待するのは間違ってるの？
忘れられた＝死の方程式が成り立つなら、もう戻してくれたっていいだろ。
どうせ奪うなら俺の記憶も奪ってくれよ。
目を閉じて、深く眠って、朝起きて、何も覚えていなければいい。
そうすれば、きっと。
...きっと、なんだろ。
｢楽になれるって？...はは、ばかみたい...｣
嘲笑も、嗚咽も、やけにしょっぱいこの涙も。
誰の耳にも届かないで、誰に見られることもなく、部屋の中に溶けていく。
部屋にこびり付いた彼の残り香が、また涙腺を刺激して、ぽろりぽろりと部屋の中に雨が降る。
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作者名：ローゼ | 作成日時：2020年8月8日 18時
