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...少しだけ、期待してたりもする。
彼が毎日迎えに来て、毎日家まで送ってくれるのは、俺が好きだからじゃないか、なんて。
希望的観測。
本当は違うかもしれない。
それでも、そう思えた方が片想いの辛さは和らいだ。
＿＿＿＿
＿＿
＿
いつもの時間。
彼が迎えに来てくれる、いつもの時間。
それなのに、彼は来なかった。
単純に遅くなってるだけかとも思ったけど、何となく気になって、暑い廊下に出た。
そのまま彼の教室まで向かう。
廊下はやっぱり蒸し暑くて、思わずため息が零れかけた。
少し歩いて彼の教室に着いた。
扉から中を覗くと、彼はやっぱりそこにいた。
...なんだ、ちゃんといるじゃん。
「きん、」
彼の名前を呼びかけた。
何となく、呼ぶのをやめてしまった。
だって、彼の視線の先には彼奴がいて。
少し濃い茶髪に、アメジスト色の瞳を持つ彼がいて。
いつも、俺を見る目とは全然違う目で彼奴を見るきんときがいて。
照れくさそうに笑いながら、楽しそうに話していた。
...時間を忘れるくらい、楽しいの？
彼との会話は、そんなに幸せなの？
いつもは気づいてくれる俺の視線にも、気づかないくらい...？
彼奴を見る彼の視線はいつもと違った。
友達を見る目じゃないような気がした。
いつもより楽しそうに話していた。
いつもより幸せそうに笑ってた。
...俺と、いる時よりも。
それはきっと、彼の中で俺が’’友達’’だからで。
それはきっと、彼の中では彼奴を’’友達’’として見てないからで。
それはきっと＿＿＿彼が、彼奴に’’恋’’をしているからで。
心底幸せそうに笑う彼を見ていられなくて、その場から離れた。
分かってる、分かってるよ。
もう、分かってる。
彼は、彼奴が好きなんだ。
俺は、彼の友達でしかないんだ。
ただの、仲のいい友達でしか、ないんだ。
ずっと見てきたんだ、分かってる。
彼の少しの変化に気づくくらいには、彼を見てきたんだ。
...それなのに、彼が恋をしている事には気づけなかったのは、俺が目を逸らしてきたから...？
彼に好きな人がいる事を、認めたく無かったから？
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作者名：ローゼ | 作成日時：2019年5月26日 21時
